マイグレーションとは?種類や目的について解説

2022年5月12日
マイグレーションとは

「マイグレーションとは…?」
「聞いたことあるけど、しっかりと理解できていない…」

など、マイグレーションについて理解できていない方は多いでしょう。IT業界の専門用語は聞き慣れないものが多く、また数も多いので非エンジニアは混乱しがちです。

本記事ではマイグレーションとは何か、マイグレーションの種類や目的、注意点などについて解説していきます。言葉の意味や種類や課題、注意点について理解することで、社内外のコミュニケーションに活かしたり、よりシステムについて理解度が上がったり、現状の改善に役立てましょう。

マイグレーションとは?

マイグレーションの意味

マイグレーションとは、データやシステムを新しい環境に移行することを指します。

たとえば、パソコンやスマホを新しいものに買い換える際、古いデバイスからデータを取り出し、新しいデバイスに移す方が多いでしょう。それと同様に企業も新しい環境に移行する際にデータを移し替えます。

たとえば、オンプレミスで稼働していた業務システムや基幹システムをAWSに移行する、他のソフトウェア製品に移行する、などといった場合が該当します。

マイグレーション自体はそこまで難しい概念ではありません。ただ、移行作業を行う際にトラブルが生じることがないように気を配る必要があります。

リプレースとの違い

マイグレーションと似た言葉に「リプレース」があります。リプレースは、古いシステムや機器を新品のものに置き換えることです。

既存システムを別環境に移行するのがマイレグーションであることに対し、既存システムを同じ環境の新品のものに置き換えるのがリプレースです。

コンバージョンとの違い

コンバージョンも混同されがちな言葉の1つです。コンバージョンは、データやファイルを別形式に変換することを指します。

新しい環境への移行がマイグレーションであることに対し、異なる設計への移行がコンバージョンです。コンバージョンはマイグレーションの一部であるとも捉えられます。

別形式に変換しなければならないため、コンバージョンの方が移行コストが多くかかる可能性が高いと言えます。

エンハンスとの違い

エンハンスはシステムの機能を向上させたり、機能を追加したりすることを指します。

新しいシステムの移行がマイグレーションであることに対し、今よりもスペックの高いシステムへの移行がエンハンスです。エンハンスの場合、性能が良くなるのであれば古いシステムへの移行もありえます。

このようにマイグレーションに似た言葉はいくつかありますので、定義をしっかりと理解した上で使い分けに注意しましょう。

マイグレーションの種類について

開発会社社員がマイグレーションを行っている

マイグレーションの代表的な種類は次の3つです。

①アプリケーションの移行
②ストレージの移行
③データベースの移行

これら3つの違いを覚えることでマイグレーションに関する理解が深まります。1つ1つのマイグレーションの種類について詳しく解説していきます。

①アプリケーションの移行

アプリケーションの移行は、マイグレーションの最も基本となるものです。基幹システムや業務システムを同機能を持った新しいシステムに移行させます。クラウド移行もマイグレーションの一部であると言えます。

システムは長く使っていると老朽化したり、業務内容にそぐわなくなってきたりします。アプリケーション移行を行うことで、障害のリスクを未然に防いだり、システムの価値を高め業務の効率化を図ったりするメリットがあります。

②ストレージの移行

ストレージの移行は、データ量に余裕がなくなってきた際、別のストレージに乗り換えることです。ストレージとはデータを保管しておくための記憶装置のことであり、HDDやSSDが該当します。

データ量に余裕がないにもかかわらず、ストレージを使い続けると、新規データの記録に不備が発生したり、思わぬ障害が発生したりする可能性があります。そのため、余裕を持って移行を行う必要があります。

また、容量に余裕がある場合でも、HDDなどの老朽化が激しかったり、機器の保守期間が切れてしまったりするなら移行を検討しなくてはいけません。

ストレージの移行は定期的に行う必要がありますが、クラウドサービスを利用している場合、仮想化技術によってストレージの容量が自動的にアップグレードされることが多いです。そのため、利用者は特に何も作業しなくて良いこともあります。

③データベースの移行

データベースの入れ替えを行う場合もあります。データベースとはデータの取り出しや変更がスムーズにできるよう整理された情報の集まりのことです。たとえば、ECサイトでは大量のユーザーの個人情報や商品情報などをデータベースに保管しています。

データベースにはMySQLやSQLiteなどいくつかの種類があり、それぞれ得意分野が異なります。他のデータベースの方がデータ保管の効率が良いと判断した場合にマイグレーションを行います。また、オンプレミスからクラウドDBへ移行する場合もあります。

マイグレーションの目的

マイグレーションの目的

ここではマイグレーションの目的を説明します。マイグレーションの目的は次の4つに分けられます。

①老朽化・サポート終了への対処
②システムの性能向上
③データの保管
④ランニングコストの削減

1つ1つのマイグレーションの目的について詳しく解説していきます。

①老朽化・サポート終了への対処

マイグレーションの最も大きな目的は、老朽化・サポート終了への対処です。

サーバーやHDDなどの物理的な機器は長く使っていると老朽化が進みます。また、OSやミドルウェアはサポート期間が終了してしまうと、システムが脆弱化してしまいます。そのため、定期的に新しい環境へ移行する必要があるのです。

移行をしないと障害などのリスクが発生するため、本音では現行の環境を維持したいが、仕方なく移行する場合も多くあります。

②システムの性能向上

システム性能向上のために、マイグレーションする場合も多いです。レガシーシステムをマイグレーションすることで、システムの性能向上を狙います。

特に昨今主流になってきているのはクラウド環境への移行です。オンプレミスのシステムは、オフィス外からアクセスできない、容量の拡張に手間がかかるなどデメリットがいくつもあります。クラウドに移行することで、これらの問題を解決できる可能性があるのです。

ただし、移行には当然コストもかかります。移行してもそこまで性能向上が見込めないと判断した場合、マイグレーションを行わない選択も検討する必要があります。

③データの保管

データの保管のためにマイグレーションする場合もあります。

機器が劣化してしまうと、保管しているデータが消えてしまう危険性があります。顧客情報などは厳密に管理する必要があり、リスクがあると判断すれば、トラブルが発生する前に移行を検討しないといけません。

新しいサーバーやストレージ、クラウドサービスなどにマイグレーションすれば、データ消失の危険性を減らせます。

④ランニングコストの削減

ランニングコスト削減のためにマイグレーションすることもあります。

たとえば、オンプレミスからクラウドに移行すれば、サーバーの電気代やデータセンターの利用料金がかからなくなり、ランニングコストを削減できます。

ただし、ランニングコストが削減できても、別のコストが発生する可能性があります。クラウド移行の場合は、サービスの月額料金やクラウドエンジニアの人材コストなどがかかります。移行によってどの程度コスト削減ができるか、あらかじめ計算しておく必要があります。

マイグレーションの課題・注意点

マイグレーションについての注意点

マイグレーションを行うことにはさまざまなメリットがありますが、必ずしもマイグレーションを行う選択が最適とは限りません。なぜなら次の3つの課題・注意点があるからです。

①移行難易度が高い場合もある
②従業員から理解を得なくてはいけない
③IT技術者を確保する必要性

マイグレーションを検討する前に、これら3つをどう解決するかを考える必要があるでしょう。1つ1つの課題・注意点について詳しく解説していきます。

①移行難易度が高い場合もある

マイグレーションの対象によっては移行の難易度が高い場合もあります。たとえば、クラウド移行によっては、プログラムの細部の変更だけでなく、アーキテクチャ(システムやソフトウェアの基本設計)の変更が必要な場合もあります。

移行難易度が高い場合、コストもかかりますし、不備なく移行ができる人材の確保も必要になります。移行するメリットと釣り合っていないと予想される場合、移行しないのも選択肢の1つではあります。

②従業員から理解を得なくてはいけない

システムなどの移行が必ずしも従業員にとって喜ばしいものであるとは限りません。

マイグレーションした結果、業務システムや基幹システムの仕様が変わり、従業員の作業フローが大きく変わる可能性もあります。

経営視点ではコスト削減などのメリットがあるかもしれませんが、従業員は新しい仕様に適応しなくてはならず、それがストレスに感じる方もいるでしょう。

移行後、作業マニュアルを用意し、従業員の作業が煩雑化させないことが重要です。また、移行によるメリットについて、あらかじめ周知しておく必要があります。

③IT技術者を確保する必要性

IT技術者の確保が必要な点も考えなくてはいけません。

たとえばクラウド移行する場合、AWSやGCPに明るいエンジニアが必要になります。

クラウド知識を備えた人材が自社にいない場合、新しい人材を雇う必要がありますが、当然採用コスト・研修コストなどがかかってきます。

マイグレーションの基本的な実行手順

開発会社社員がマイグレーションの実行手順について話している

最後に、マイグレーションの基本的な実行手順についてまとめました。マイグレーションは次の4つの手順に沿って行うのが基本です。

①現状の把握
②戦略の決定・分析
③テスト・移行
④運用

1つ1つの手順について詳しく解説していきます。

①現状の把握

1つ目は現状の把握です。

「なぜ移行を行う必要があるのか」理由を明確にします。現行システムの一覧を図などに表し、それぞれの問題点を関係者と話し合う必要があります。

問題点を洗い出したら、今後要求されるシステムレベルを把握し、具体的な目標を設定します。目標を設定することで、どのような方向でマイグレーションすべきか解像度が上がります。

②戦略の決定・分析

2つ目は戦略の決定・分析です。

「どのシステムが移行可能か」「移行する際のリスク・コストはどの程度か」などの整理をします。移行方法・移行順番を決定し、最終的には移行ロードマップを作成します。

たとえば、クラウド移行にはリホストやリプラットフォームなど、主な移行戦略が7種類あります。これらの移行方法のうちどれが最適か吟味しなくてはいけません。

また、移行時に問題になりそうなことも事前に確認し、移行作業でトラブルが起きた際にどのようなフローで解決するかも整理しておきます。

③テスト・移行

3つ目はテスト・移行です。

新しい環境への移行後にシステムに不具合が発生することを防ぐために、テストは入念に行う必要があります。

マイグレーションでは新旧一致テストを行います。新旧の実行結果を比較検証し、旧環境固有の既存に依存する不具合を検出します。

④運用

4つ目は運用です。

システムの運用状況のデータを収集して分析を行います。移行したにも関わらず満足の行く結果を生み出せていない場合、原因を明らかにする必要があります。

クラウド移行であれば、課金額も継続的に確認する必要があります。課金額が見合っていないなら、利用状況に関する検討を行わなくてはいけないでしょう。

その後も継続して状況分析を行い、PDCAサイクルを回していくことでシステムの質を高めます。

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最後に

この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。

    • マイグレーションとは、データやシステムを新しい環境へ移行すること
    • マイグレーションの目的:老朽化・サポート終了への対処/システムの性能向上/データの保管/ランニングコストの削減
    • マイグレーションの課題・注意点:移行難易度が高い場合もある/従業員から理解を得なくてはいけない/IT技術者を確保する必要性

マイグレーションはコスト削減や業務効率化に直結するため、重大な決断と言えます。マイグレーションのメリット・デメリットを踏まえ、「どのシステムを移行すべきか」「どのタイミングで移行すべきか」検討することが肝心です。

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