はじめに
すでに多くの人が見聞きしたことのある「 80:20の法則 」について今あらためて筆を取ろうと思ったのは、実は私自身もこの法則について漠然としか理解していないことに気づいたからです。
ある日のコーヒータイムにたまたま、この法則が話題に上がりましたが、その場にいた友人の多くがこの法則を知らないことが分かりました。とはいっても、私自身もその場で明快にこの法則を説明できたわけではありませんでした。そこで改めて、この有名な法則について復習をして、みなさんに共有しようと考えたわけです。
どうぞしばしの間お付き合いください。
80:20の法則 とは?
MBAの卒業生あるいは履修生なら、80:20の法則は少なくとも耳にしたことがあるはずです。発見したイタリアの経済学者ヴィルフレッド・パレートにちなんで、パレートの法則(Parto Law)とも呼ばれているこの法則は、以下のように表現されています。
「得られた結果の80%は、費やした努力の20%によるものである」
逆に言えば、 努力のうち80%は、結果のうち20%の部分にしか貢献していません。そんなのあり!?
この法則は統計的手法によって示されました。発見されてから200年間の間、これを否定しようとする多くの試みがありましたが、パレート法則の評価は不変のままです。
ここで、法則の証明(あるいは反証)の手法については検討するつもりはありません。あまり堅くなりすぎず、80:20の法則が示唆する興味深い知見を眺めてみましょう。
80:20の法則に関する興味深い事実
- 会社の売上の80%は、20%の顧客から得られています。
- アプリユーザーが利用時間の80%を費やすのは、アプリの機能のうち20%の部分です。
- 家庭菜園においては、総生産量の80%が、20%を占めるマメ科植物によるものです。
- 20%のセールスパーソンが、会社の売上の80%を生み出しています。
- 20%の映画が、興行収入の80%を生み出し、映画ファンの80%の心を掴んでいます。
- 世界のGDPの82.7%が、世界の人口の20%によって握られています(1992年の統計)
80:20の法則が極めて多くの事象に適用できることは、これら以外にも多くの帽章があります。その中には、厳密に80:20を示す事例だけでなく、80:30とか、60:25であるような例も存在しますが、要するに費やした努力に対して成果が均等に分配されることはないのです。40:50、50:50のような数字ではなく、常に一方に傾く傾向があり、これがこの法則を理解する鍵です。
本当のところを言うと、80:20の法則はもう少し複雑なことを言っています。関心のある方は、書籍「The 80/20 Principle」を読むか、「Pareto」で検索してみてください。
この記事では、とりあえず、80:20という数字を拠り所に話を進めていきましょう。
80:20の法則 を適用してみる
20%の努力が80%の結果をもたらすことがわかりました。では、この法則からどんな指針を引き出すことができるでしょうか?
・ 仕事時間の20%は、その仕事の結果の80%を生み出す。
このことが分かっていれば、、最高の効率が達成されるように、作業を調整できます。たとえば、タスクを受け取ったら、最初の数分かけて最重要の課題を見つけるのです。その部分可能な限り最高の集中力を投入して、時間の20~30%をあてるようにします。
このような時間配分は、あまり重要でない部分に多くの労力を割いてしまうことを避けるだけでなく、時間不足によるうっかりミスの回避にも役立ちます。
では、あなたがプログラマーだとします。タスクの最重要部分とは、何でしょうか?
プログラミング、またはコーディングだとお答えになった方、正解です。正解ではありますが、そのコーディングに実際かかっている時間の割合は、どのくらいか意識したことはありますか?
コーディングは実際、仕事全体の30%の時間でしかないのです。
多くのITベンダー、特にアウトソーシング企業で調査を行ったところ、かなりの数のプログラマーが、この部分で深刻な間違いを犯したことがわかりました。
最重要の成果物であるコードが完成したからと、そこで作業を終えていたのです。これは誤りです。我らがパレートの法則は、まだ重要度に置いて80%の作業しか完了していませんよと告げています。
残りの20%の作業、コーディング以外の付随するタスクに、実に70%の時間がかかることを、意識せずに計画を立てるプログラマーが後を絶ちません。
その結果は何でしょうか? 残業です。かくいう私も同じ過ちを犯し、徹夜で働かなくてはならなかったことが何度もあります。
コーディングの重要性を理解し、30%を占めるコーディングにきちんと計画力と集中力を投入すべきです。それは時間の70%を占めるタスクの結果にも影響します。
別の観点で法則を見てみましょう。すでに例示で挙げたように、ユーザーは80%の利用時間を、アプリの機能の20%にのみ費やしています。
この事実は、開発チームにとって非常に役立ちます。たとえばテスト時には、アプリ全体を漠然と検査するのではなく、主要機能の20%が安定していることを確認し、単体テストの時間の多くをこの20%の機能のみに割り当てるのはどうでしょうか?
実際これは、スタートアップによる開発が成功するための有用な指針です。
成功しているスタートアップはいずれも、テストユーザー向けに、主要機能の20%だけをまとめたMVP(最小価値プロダクト)を作成しています。信じられないって? ではFacebook、Instagram、Chatwork、…の機能全部のうち、みなさんはいったいどれだけを使っているか、ご自身で確かめてみてください。
上記の80:20分布は、読者のみなさんがプログラマーであれ、テスターであれ、人事、経理、マネージャーであったとしても、ほとんどの作業に当てはまるものです。
したがって、みなさんは実際にタスクに取り掛かる前に、最も効率の良い時間のかけ方を、ぜひ検討してくださいね!
・ 20%の投資が、80%の利益を稼ぎ出す。
投資ってなんだか大げさなことのように考えていませんか? 実は、投資の意味は極めて簡単です。時間、労力、お金を費やすこと。それだけです。
これらをひとまとめに、努力(エフォート)を費やすと呼んでもよいでしょう。投資が努力を費やすことである以上、我らがパレートの法則はここでも、投資のうち20%だけが実際に結果につながり、残りの80%は捨てられているということを示唆しています。
なんともったいないことでしょう! さすがに私がデタラメを言っていると疑っていませんか?
どうぞウィンドウを閉じないでもう少し聞いて下さい。
例えば、今まで行ってきた外国語学習(英会話など)は「時間、お金」の投資の一種ですし、運動、読書、ニュース、トレンド情報の収集も投資の一種ではないでしょうか。要するに、毎日は意識しなくとも投資の連続ということです。こう考えてみれば、仕事について見てきたのと同じように、80:20の法則を当てはめて計画を立ててみようと、思えてくるのではないでしょうか。
トリビアのコーナー
Google、Facebook、Appleなどのテクノロジー企業もこの法則を支持しています。こういった企業では、従業員が個人的な目的(ペットプロジェクト、ブログ執筆、ゲームなど)に費やすために労働時間の20%を費やすことができます。
現在、私は自分の業務時間の20%を、個人的な仕事にも費やしています。たとえば、この記事は私の時間の20%から出てきています(これを読んだボスにクビにされませんように!)
おわりに
読者のみなさんも、80:20の法則(パレートの法則)の基本をおさらいし、仕事に適用してみてくださいね。
そして、仕事以外の実生活においても、やはりこの法則の有用性は際立っていますから、この法則についてもっと詳しく調べてみることもおすすめです!