オフショア開発の市場規模は、世界的にみても拡大傾向にあります。
の調べによると、世界全体の市場規模は2000年の時点で456億ドルに達しており、2018年には865億ドルまで拡大しています。
日本でもオフショア開発の市場規模は年々拡大しており、2002年には200億円でしたが、2011年には1,000億円まで伸びている状況です。
今後も更なるオフショア開発の市場規模拡大が予測されている中で、日本では更にエンジニアの人材不足が進み、オフショア開発サービスを利用する企業が増えていくことでしょう。
本記事では、オフショア開発における各国の市場規模と、最新動向等に関して分かりやすく解説しています。
最後まで読んでいただくことで、オフショア開発の必要性を理解するとともに、今後の動向に関しても把握することができるでしょう。
オフショア開発の市場規模と歴史
2010年ごろまでは日本のオフショア開発の大部分を、中国が占めていました。
中国のオフショア開発の特徴として、日本語に対応したエンジニア人材が多いことから、中国の開発チームに依頼する機会が多かったからです。
また、その頃は基本的にメールでのやり取りが主流だっため、今のようにテレビ電話やテキストチャットのようなツールは、使われていませんでした。
加えて、翻訳ツールも未発達だったこともあり、ブリッジSEにかかる負担もかなり大きかったといえます。
しかし、2020年に入り中国よりも、ベトナムやフィリピンなどの途上国によるオフショア開発へ、主な依頼先が変わりつつあります。
他国と比較してエンジニアのレベルも高く、コスト面でも非常に優れていることから、日本企業の多くがオフショア開発先として注目しているのが現状です。
委託先の候補として”ベラルーシ”も注目されている
“ベラルーシ”とは、東欧にある人口約950万人の小さな国です。
欧米からは優秀なオフショア開発国として知られており、IT立国であることからも、一部では「東欧のシリコンバレー」と呼ぶ人もいます。
国がIT分野に関して積極的に後押ししているため、インフラ環境はかなり整っており、ソフト・ハード問わず優秀なエンジニアが多いです。
ただし、国内情勢が不安定なため、懸念すべき点も多々ありますが、総合的にみて今後は東南アジアに続きオフショア開発先としてかなり期待されています。
また、実際にコスト削減を目的に、一部の日本企業もオフショア開発先として、ベラルーシを選んでいるようです。
とはいえ、コスト削減だけを目的にオフショア開発を利用するのは、リスクが大きいため、慎重にリスク対策を行った上で取り組むのが得策でしょう。
オフショア開発の委託先はベトナムが過半数を占める
2021年度においてオフショア開発先として、過半数以上がベトナムを指定しています。
-
- ベトナム:52%
- フィリピン:12%
- インド:10%
- バングラデシュ:9%
- ミャンマー:9%
- 中国:7%
※「指定なし」が全体の65%を占める
出典:『オフショア開発白書(2021年版)』
によるとベトナムでは、政府がオフショア開発事業に力を入れており、教育の面からプログラミングスキルや、語学力の向上に積極的に取り組んでいます。
日本でもIT教育に関する関心が、年々高まってはきてはいますが、ベトナムほど力を入れて動いている様子は伺えません。
その点、ベトナムは既に小学生の段階でコンピューター教育が広く行われており、教育のデジタル化もかなり進んできています。
また、教職員に対しても教育の質を上げると共に、情報技術の教育に力を入れるように促しています。
このような背景からも、今後はより一層オフショア開発地として、多くの企業から注目を集めることでしょう。
オフショア開発の委託先の現状と最新動向【先進国】
オフショア開発先進国は、新興国と比較して人件費の高騰が目立ちますが、まだまだ根強い人気があるといえます。
特に中国やインドは、IT人材が豊富な上にオフショア開発においては、歴史が長く実績も豊富です。
そのため、オフショア開発の委託先として、コスパよりも品質や実績等を重要視する日本企業にとっては、オフショア開発先進国が大変おすすめだといえます。
中国の現状と最新動向
オフショア開発先進国として、長い歴史と確かな実績を持っているのが中国になります。
近年は特に経済成長が激しく、GDPに関してもアメリカに次ぐ、世界第2位の成長率を誇ります。
急激な成長と技術革新からも、中国ITエンジニアの人件費は年々増加傾向にあり、今ではエンジニア1人あたり月35万円〜40万円が平均相場です。
そのためオフショア開発の一番のメリットである”コスト削減”に関しては、中国は最早当てはまらない、といっても過言ではありません。
また、日本とは異なり、国内人口も中国は年々増えてきていますので、今後も優秀なIT人が増えていくことが予想されます。
日本からも近く日本語にも対応している中国ITエンジニアは多いため、人件費の高騰を考慮しても、オフショア開発の委託先候補からは外れることはないでしょう。
インドの現状と最新動向
世界トップレベルのIT技術を持っていると言われているインドでは、オフショア開発においては先進国に分類されます。
英語も公用語として広く活用されているため、オフショア開発においても問題なく、プロジェクトを進めることが可能です。
また、国内人口に関しても、中国同様に増加傾向にあり、今後もますます優秀なIT人材が増えていくと予想できます。
ただし、近年はインドITエンジニアの人件費も高騰しており、エンジニア1人あたり月30万円〜40万円が平均相場となっています。
現状を考えると”コスト削減”を目的に、インドを委託先として選ぶのはおすすめしません。
しかし、インドITエンジニアの技術力はかなり高いため、卓越したスキルを目的にオフショア開発先として選ぶのは、良い選択だといえます。
オフショア開発の委託先の現状と最新動向【新興国】
オフショア開発においては、2021年時点では特に新興国の成長がとても目につきます。
日本企業の多くも新興国に対して、委託している会社が過半数を占めており、2010年頃まで主流だった先進国と比較するとその差は歴然です。
実際に委託する際には、国によって特徴が全く異なりますので、必ず委託先の特徴を把握した上で検討するようにしましょう。
フィリピンの現状と最新動向
英語力に関しては、他のオフショア開発新興国と比較して非常に高いスキルを持っているのが、フィリピンITエンジニアの大きな特徴です。
オフショア開発においては英語力は必須のスキルなので、コミュニケーション面でのリスクを考えると、重要な項目になります。
ブリッジSEも基本的には英語でやり取りを行うため、フィリピンITエンジニアが英語力に長けている点は、高く評価すべきです。
また、フィリピンへオフショア開発を委託した場合のコスト面としては、フィリピンITエンジニア一人当たり月25万円〜30万円程度になります。
日本人のエンジニアに委託する場合と比較するとかなりコスト面で優れており、英語力も非常に高いため、ベトナム同様に期待できるでしょう。
フィリピンは全体的に人口が増加傾向にあり、今後もますます優秀なIT人材が増えていくことが期待できます。
先を見越して早期にフィリピンとの関係性を築こうと、考えている日本企業も少なくありません。
ミャンマーの現状と最新動向
ミャンマーは他のオフショア開発新興国と比較して、まだ歴史や実績がそれほどある訳ではありませんが、今後の期待値としては非常に高いです。
実際にミャンマーITエンジニアの人件費は、月18万円〜20万円と非常に低価格であり、他国と比較してもかなり安いです。
今後の市場拡大も予想されているほか、親日国家ということもあり、日本企業からコンタクトが取りやすいのも大きな特徴だといえます。
ただし、国内情勢が不安定な点とインフラが整っていないのが、大きな懸念材料となっています。
現在2021年においても政情を見守りつつ、今後の動向を追っていく必要があります。
ベトナムの現状と最新動向
在ベトナム日本大使館経済班の調べによると、2020年におけるベトナムのGDP成長率は、2.2%と成長を維持しており、日本と比較して右肩上がりです。
勢いのある経済成長もさることながら、国内のインフラに関しても以前よりも大分改善されてきています。
2000年頃は国内のインフラが整っておらず、オフショア開発の委託先としてはあまり期待されていませんでした。
しかし、その後国策としてベトナム政府が、IT産業教育に力を入れ出したことにより、若いベトナムITエンジニアが大変多くなりました。
逆に日本では経験豊富なITエンジニアが多いことから、若い優秀なベトナムITエンジニアと組んで開発するのは、かなり相性が良いとされています。
また、エンジニアのコスト面で見ても、ベトナムの場合はシニアエンジニア層でも月に20万円〜30万円ほどと、日本と比べるとかなり安いです。
加えて、ベトナム人は日本人と似た国民性を持っており、真面目で勤勉な人が多く、自学研鑽しスキルアップや生産性の向上に励むエンジニアが多数います。
総合的にみてベトナムは親日国家ということもあり、オフショア開発としての委託先としては、かなり有力候補だといえるでしょう。
まとめ
日本国内のITエンジニアの人材不足を解消する方法として、オフショア開発を選択する企業は年々増えてきています。
国内ではなく今後は海外に目を向けて、優秀なIT人材の確保を考えて行かなければなりません。
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