コスト削減やリソース確保のために、コストパフォーマンスのよい海外の開発チームに依頼するオフショア開発が、最近は話題となってきています。
しかし、開発チームとのコミュニケーション問題や、発注先の選定ミスなどにより、オフショア開発が失敗してしまう事例も少なくありません。
失敗してしまうケースには類似の原因が挙げられるため、過去の失敗を参考に対策を行うことも可能です。
本記事ではオフショア開発の失敗事例を元に、共通する主な原因に関して5つに絞って分かりやすく解説しています。
成功するための要点に関しても7つ挙げていますので、オフショア開発を進めるにあたり是非参考としてみてください。
【目次】
オフショア開発とは?
オフショア開発(offshore development)とは、システム開発やアプリケーション開発等において、海外の企業やリソースを活用して開発を行う手法を指します。
日本においては、IT人材不足による人件費の高騰や人材確保が難しいことから、海外の開発企業に委託して開発作業を進める手法が広がりをみせています。
オフショア開発では、ベトナム等のオフショア開発国の安価かつ高品質な人材を活用することができるため、コストパフォーマンスが非常に良いです。
もちろん、メリットだけではなくデメリットもありますので、実際に開発を依頼する際には、十分に理解した上で検討をする必要があります。
オフショア開発で失敗してしまう主な5つの原因
【主な5つの原因】
-
- 開発チームとのコミュニケーション
- 依頼先の選定ミス
- 発注者側の管理不足
- 開発メンバーが流動的である
- 急に経済や為替の影響で人件費が高くなる
オフショア開発は確かに優れた手段ではありますが、全てのケースが成功している訳ではありません。
失敗する主な原因としてよく挙げられるのが、開発チームとのコミュニケーションに関する問題です。
海外の開発チームと開発を進める上で、言語による壁が悩みの種となっていることは多いため、しっかりと対策を練りましょう。
開発チームとのコミュニケーション
オフショア開発サービスを利用するにあたり、一番の問題点が開発チームとのコミュニケーションです。
オフショア開発を進める際は、基本的には自社と海外の開発チームの橋渡し(ブリッジ)役を務める「ブリッジSE(Bridge SE、BrSE)」が入ります。
しかし、ブリッジSEの能力不足により、思ったように開発が進まないケースもあります。
ブリッジSEのアサインに関しては、オフショア開発国側から提案されるケースもありますが、自社で準備するケースも含め慎重に検討した方がよいでしょう。
依頼先の選定ミス
オフショア開発に関しての情報や経験が不足している場合に多いのが、そのまま案件を丸投げしてしまうケースです。
依頼先の情報等を深くリサーチせずに、ただ案件だけを丸投げしてしまうと、失敗する可能性が非常に高いです。
実際にオフショア開発サービスを提供している企業を選ぶ際には、必ずこれまでの実績や得意分野、開発メンバーの特徴等を調べるようにしてください。
特に以下のような項目に該当する依頼先は、トラブルになる可能性が高いです。
-
- 実績がない
- 会社情報が少ない
- 単価が相場よりも非常に安い
- 口コミや評判が悪い
はじめてオフショア開発を利用される方は、特にリサーチに時間をかけて信頼できる依頼先であるか、見極めるようにしましょう。
また、見積もりに関しても複数社から取るようにして、比較することが大切です。
発注者側の管理不足
発注者側の管理不足による、オフショア開発の失敗ケースも多いです。
詳細まで詳しく把握するのは簡単ではありませんが、確認せずに放置していると開発がブラックボックス化してしまいます。
進捗状況のこまめな把握作業は、最終的な成果物の品質に大きく影響を与えますので、必ず怠らないようにしましょう。
また、日本人の開発者とは違い「行間を読む」ということはしないため、曖昧な指示だと絶対に伝わりません。
逆に、細かく指示を出し過ぎて、開発チームに過度なストレスをかけるのも開発に悪影響なため、適度なバランスを保つよう注意しましょう。
そもそも日本人とは文化や習慣が根本的に異なりますので、時には寛容に接することも必要でしょう。
開発メンバーが流動的である
オフショア開発では、開発メンバーの入れ替わりが起こる可能性が高いです。
海外で開発しているということもあり、依頼側が知らない間に他のメンバーに入れ替わっていた、というケースもあります。
開発メンバーが流動的になってしまうと、チームに知見がたまらない上に、納期遅延や成果物の品質低下にも繋がります。
そのため、開発チームのメンバーはできるだけ固定にしてもらい、入れ替わりがある際には、必ず報告してもらうようにしましょう。
仮に開発メンバーの入れ替わりが発生した際に、引き継ぎをスムーズに行うためにも、引き継ぎに関するマニュアルを決めておくのも良いでしょう。
できるだけ開発メンバーの流動性による開発作業への影響を最小化するためにも、あらかじめ対策を練っておくのが得策でしょう。
急に経済や為替の影響で人件費が高くなる
オフショア開発のチームの所在地は主に、ベトナムやインドなどの発展途上国であるケースが多いです。
発展途上国は経済や為替等が不安定な国が多いため、景気や為替等の影響により、発注時よりも人件費が高騰する場合があります。
経済状況に関しては予測が難しいため、ある程度の変動を見越した予算を確保しておく等の事前対策をとっておくとよいでしょう。
オフショア開発で実際にあった失敗事例4選
オフショア開発は広く浸透してきた開発手段ではありますが、失敗事例も多いです。
他社の失敗事例を自社でも発生させないよう、要点をしっかりと抑えて事前に対策しましょう。
失敗事例1:コーディング規約違反
A社がオフショア開発サービスを利用して、海外の開発チームに案件を依頼しましたが、提示したコーディング規約が守られていませんでした。
「コーディング規約」とは、主に複数人で開発作業を行う際に、保守性や可読性等を高めるために作成されるルールのことです。
日本人の技術者であれば基本的に規約を守ったコーディングを行いますが、海外チームの場合は文化が違うため、規約を意識せず開発を進めるケースもあります。
規約を違反しても動作に問題が無い場合もありますが、保守性の観点等から違反している場合は修正する必要があります。
テスト動作で発見できないこともあるため、オフショア開発を活用する際には、コーディング規約違反が発生するリスクを念頭に置いておく必要があるでしょう。
失敗事例2:頻繁な納期遅延
オフショア開発を利用したB社は、海外の開発チームの様子を伺うために、定期的にテレビ電話を行っていました。
先方からは「納期までには間に合う」と報告を受けていましたが、最終的には予定していた納期から約1週間遅れて納品されたようです。
日本は納期を重要視する文化がありますが、国によっては時間に対してルーズな側面もありますので、開発工程の詳細な見える化や対応のチェックリスト化などを行い、適宜認識をすり合わせながら進捗を管理していくと良いでしょう。
失敗事例3:低品質な成果物の納品
C社の社内リソース不足により、急遽オフショア開発サービスを活用して、海外の開発チームに委託しました。
仕様書の詳細を伝えたにも関わらず、納品された成果物は期待していたクオリティには、程遠いものだったようです。
日本では仕様書外の品質についてもある程度確保していることが多いですが、海外では仕様書に書かれている内容が全てであり、それ以外の項目については日本と同様に品質を担保してはくれません。
そのため、仕様書はできるだけ詳しく記載し、間違った解釈をされないような工夫が必要です。
失敗事例4:開発費用が予算を超過
D社は、見積が予算内に入っていることを確認した上でオフショア開発を発注しましたが、開発作業を進めていく中で人件費の高騰等を理由に費用が増加していき、最終的には予算をオーバーしてしまいました。
代表的なオフショア開発国としてはベトナム、中国、インド等が挙げられますが、日本とは異なり経済的に不安定な部分が多いです。
社会情勢や為替変動等が理由となり、人件費が当初の見積よりも高騰してしまう可能性があるため、事前にリスクを想定した上で対策をとることが重要です。
ベトナム・中国・インド、主要な発注先の国の特徴
オフショア開発サービスを活用するにあたり、特に日本企業からの依頼が多い、ベトナム・中国・インドの特徴等をまとめました。
それぞれ特徴が異なりますので、実際に依頼される際には、是非とも参考にしてみてください。
ベトナム|ハイレベルのエンジニアを安く雇える
ベトナムのオフショア開発の特徴としては、真面目かつ優秀なエンジニアが多く、コストも非常に安いことにあります。
コストパフォーマンスの良さから日本企業では、ベトナムの開発チームに依頼することが多くなっており、徐々に優秀な人材の確保が難しくなっています。
また、ベトナムでは国をあげてオフショア開発サービスに力を入れており、日本向けに施策を行っている点もかなり大きいです。
ただし、中国やインドと比較して、ITインフラの整備が遅れているため、その点に関しては配慮が必要でしょう。
中国|日本語能力が高いエンジニアが多い
今ではアメリカに次ぐ、世界で二番目の経済大国として注目されている中国ですが、エンジニアのレベルも非常に高く、対応できる開発案件も豊富です。
また、オフショア開発で一番問題視されているコミュニケーションに関しても、中国は日本語能力が高いエンジニアが多いため、他国と比べ問題になることは少ないです。
ただし、他のオフショア国と比較してコスト面では高くなってしまいがちなので、その点だけ考慮しておく必要があります。
インド|エンジニアの技術力は世界トップクラス
インドの開発チームの特徴はなんといっても、エンジニアの技術力の高さにあります。
オフショア開発の歴史も長く、下流から上流工程まで参画し開発をサポートしてくれます。
また、中国と比較して人件費に関しては、そこまで高くはないため、総合的な開発コストも抑えることができるでしょう。
なお、インドは公用語が英語ということもあり、英語でのコミュニケーションが可能な企業であればコミュニケーションコストは削減できる可能性もあります。
オフショア開発で成功するための7つの要点
【成功するための7つの要点】
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- 設計の詳細まで全て日本語化する
- 依頼先の企業は徹底的に調べる
- 開発状況は定期的に確認する
- 開発メンバーは極力固定してもらう
- 開発コストの算出を定期的に行う
- 品質基準を明確に定める
- 開発先の国民性や文化等を理解する
オフショア開発を成功させるための要点を、分かりやすく7つに絞って、ぞれぞれまとめました。
これからオフショア開発の利用を検討されている方は、失敗しないための対策として是非とも参考にしてみてください。
設計を詳細まで検討・言語化する
仕様や設計を伝える場合は、まずはしっかりと仕様書・設計書の細部まで定めた後に、ブリッジSEから現地の開発チームに伝えるとよいでしょう。
なぜなら、日本人開発者とは異なり、海外メンバーだとどうしても文化や習慣の違いから、詳細説明がないと伝わり難いからです。
日本語でも良いので仕様書を細部まで細かく言語化し、ブリッジSEに託すとよいでしょう。
依頼先の企業は徹底的に調べる
オフショア開発を利用する際には、必ず複数企業から見積もりを出してもらい、これまでの実績や開発メンバーの能力等の比較・調査を行いましょう。
あくまでも自社の事業の一端を担ってもらうチームという意識を持ち、下請けだと考えずに接することが大切です。
依頼する開発チームはビジネスパートナーだと考えて、慎重に選定することが求められます。
開発状況は定期的に確認する
開発チームの進捗状況を把握していないと、最終的に納品される成果物の質が担保されない上に、納期遅れにも繋がります。
開発チームが海外にあるということで、状況管理は難しいようにも思えますが、実際には工夫次第で解決することは可能です。
例えば開発におけるチェックリストを作ったり、開発状況を表やグラフにして見える化したり、などが挙げられます。
開発メンバーは極力固定してもらう
開発における体制や人員に関しては極力固定化し、万が一メンバーが入れ替わる際には、事前に報告してもらうよにしましょう。
オフショア開発では長期的な開発案件が多く、どうしても開発メンバーの入れ替わりが起きてしまいます。
メンバーの入れ替わりが原因で、成果物の納期遅れや質が落ちてしまわないように、事前に対策を打つことが大切です。
コストを定期的に確認する
オフショア開発では、諸外国の経済や国政、為替等が原因で、当初の予算よりも大幅にコストがかかる場合があります。
そのため、開発コストに関しては、定期的に確認しましょう。
定期的に開発コストを確認し見直すことで、何が原因でコストが高くなっているのかを事前に把握し、対策を練ることができます。
逆に、確認せずに放置しておくと、最終的なコストが予算オーバーになってしまいかねません。
品質基準を明確に定める
オフショア開発を活用して海外の開発チームに依頼する際には、事前に品質に関する基準を明確に定めておきましょう。
予め細かく品質基準を定めておくことにより、成果物の質を担保することができる上に、進捗状況の把握にも役立ちます。
開発先の国民性や文化等を理解する
オフショア開発を活用するのであれば、開発チームの所在地である国の文化や習慣等に関しても、理解を深めておく必要があります。
開発メンバーの文化や習慣等を学ことで、開発における誤解や思い違い等を回避することができます。
逆に、国民性や文化に関する理解が浅いと、コミュニケーションの面でかなり苦労することになりかねません。
まとめ
オフショア開発における、失敗事例に基づいたよくある原因を5つご紹介しました。
-
- 開発チームとのコミュニケーション
- 依頼先の選定ミス
- 発注者側の管理不足
- 開発メンバーが流動的である
- 急に経済や為替の影響で人件費が高くなる
メリットばかりに目が行きがちですが、デメリットも正しく理解し、対策を練ることが大切です。
オフショア開発は、事前にしっかりと対策を行うことで、高品質かつ安価な開発を行うことができる優れた手法です。
本記事を参考に、是非一度検討してみてはいかがでしょう。
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