ニアショア開発を行っている企業に開発を依頼すべきか悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。開発するシステムの種類によっては、ニアショア開発と相性が良い場合とそうでない場合とがあります。本記事ではニアショア開発のメリット・デメリットや依頼方法について解説します。
ニアショア開発とは?
ニアショア開発とは地方企業にシステム開発を外注することを言います。オフショア開発の対義語であり、ニアは日本語で「近い」という意味になります。オフショア開発は海外に開発を外注するのに対し、ニアショア開発は国内(近い場所)に外注します。
なお、一口にニアショア開発といってもさまざまな形態があります。開発すべてを任せるケースもありますし、要件定義や設計は自社で行い開発のみを任せるケースもあります。また、システムの運用・保守を依頼する場合もニアショア開発に含まれます。
オフシェア開発とは?
オフショア開発は、国外のベトナムやタイといった国のエンジニアに開発を依頼することです。
ベトナムなどの発展途上国は日本よりも人件費が安いです。そのためオフショア開発を行うことで開発費用をおさえられるメリットがあります。また、海外エンジニアのなかには優れた技術力を持った人材も多くいます。
ただし、オフショア開発の場合、言語の壁があるのが難点です。オフショア開発の場合ブリッジSEと呼ばれる、現地の言葉を話せるエンジニアが現地と依頼企業の橋渡しを行う必要があります。
ブリッジSEに関しては以下の記事に詳しく解説していますので、併せてお読みいただけるとより知識が深まるでしょう。
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ニアショア開発が注目されている理由
現在日本では、エンジニア不足が問題となっています。スマホやインターネットの普及に伴い、アプリやシステム開発の需要が上がっているのに対し、日本ではプログラミング教育が遅れていることもあり、人材が足りていないのが現状です。
経済産業省(みずほ情報総研株式会社)は、2030年には約79万人のIT人材が不足すると推察しています。
※参考
- IT 人材需給に関する調査 -調査報告書(みずほ情報総研株式会社)
特に中小企業は優秀なエンジニアを確保できないことも多いです。そこで、ニアショア開発を行い、地方で暮らすエンジニアの力を借りる企業が増えているのです。
IT企業は都市部に集中する傾向がありますが、地方にも優秀なエンジニアを保有する企業は多くあります。ニアショア開発では彼らの技術力を活用することが可能です。
ニアショア開発を行うメリット
ニアショア開発は一般的なシステム開発に比べ次の4つのメリットがあります。
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- コストの削減
- コミュニケーションが取りやすい
- 地方活性化につながる
- リスクの分散
開発会社にとってこれら4つのメリットは大きいため、ニアショア開発は現在注目されています。1つ1つのメリットについて詳しく解説していきます。
1.コストの削減
ニアショア開発の最も大きなメリットは、開発コストをおさえることができる点です。
日本は都市部よりも地方の方が年収が低い傾向にあります。2021年の平均年収では東京都がもっとも高く438万円となっており、地方との差が開いています。
※参考
平均年収ランキング(47都道府県・地方別の年収情報)【最新版】|doda
システム開発にはさまざまなコストがかかりますが、そのなかでも多くを占めているのは人件費です。地方に発注して人件費をおさえることができることは、大きなメリットでしょう。
2.コミュニケーションが取りやすい
ニアショア開発はオフショア開発と違い、海外に発注するわけではないため、言語の壁も時差もなくコミュニケーションが取りやすいです。
また、最近ではZoomやSlackなどのテレワークツールも普及しており、離れた場所でも容易にやり取りを行うことができます。
コミュニケーションの障壁がないと、仕様変更があった場合なども迅速に連絡できるため、開発効率を上げられるメリットがあります。
3.地方活性化につながる
ニアショア開発は地方活性化につながるメリットもあります。
現在日本では都市に人口が集中していることが問題になっています。そこで、国は地方活性化を目指し、補助金や固定資産税免除などの制度を導入していることもあり、ニアショア開発を後押ししてくれます。
また、地方にも優秀なエンジニアは多くいます。彼らが実力を十分に発揮するためにも、ニアショア開発はさらに日本で広まることが望ましいと言えるでしょう。
4.リスクの分散
日本は災害が多く発生するため、災害リスクをいかにおさえるかは多くの企業の課題となっています。
たとえばECサイトを運用する場合、地震によって停電が起きてしまったら、復旧するまで売上がゼロになってしまいますし、ユーザーも離れてしまう恐れがあります。
ニアショア開発を行い業務の一部を地方に委託すれば、停電が発生してもサービスを稼働し続けられる可能性もあります。このようにニアショア開発はリスク分散にもつながります。
ニアショア開発を行うデメリット
続いて、ニアショア開発を行うデメリットを解説します。一般的なシステム開発と比較して、ニアショア開発には次の3つのデメリットがあります。
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- エンジニアの確保が難しい
- 企業選定の難しさ
- 技術力が高いとは限らない
1つ1つのデメリットについて詳しく解説していきます。
1.エンジニアの確保が難しい
ニアショア開発ではエンジニアをどのように確保するかが課題と言えます。
地方はそもそも人口が少ないうえに、最近ではニアショア開発を依頼する企業が増えたため、必ずしも人材を確保できるとは限りません。
地方にも優秀なエンジニアはいるものの、他の企業に取られてしまっている可能性があります。ニアショア開発を行う場合、地方企業や地方エンジニアとマッチングする方法を考える必要があります。
2.企業選定の難しさ
ニアショア開発に限った話でもないですが、システム開発を依頼する場合、企業選定が重要となります。
依頼する企業を間違えると、納期までに納品してくれなかったり、開発したシステムの品質が悪かったりすることもあります。
そのため、ニアショア開発を依頼する場合、地方企業の実績やエンジニアのスキルレベル、担当者のコミュニケーション能力などをチェックする必要があります。
3.技術力が高いとは限らない
外注先企業は必ずしも技術力が高いとは限りません。
特に地方は、都内よりも最新技術に精通している場合が少ないため、たとえば人工知能関連の開発などを依頼する場合、難しくなる可能性もあります。
また、地方のIT企業は古い環境で開発を続けていることも多いため、開発力が低く、依頼側の要望通りのシステム開発ができないこともあるでしょう。
もちろん地方でも、最新技術に精通した優秀なエンジニアはいます。ニアショア開発を行う場合、優れた実績を持つ企業といかにマッチングするかが重要と言えるでしょう。
ニアショア開発を依頼する方法
ここまで読んで、ニアショア開発を依頼したいと思った方も多いのではないでしょうか。ただ、地方の開発企業とマッチングするのは大変です。
そこで、次の2つの方法を取ることをおすすめします。
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- ニアショア機構から探す
- ニアショアIT協会から探す
これら2つの方法なら、比較的簡単に地方企業とマッチングできます。1つ1つの方法について詳しく解説していきます。
1.ニアショア機構から探す
1つ目はニアショア機構から探す方法です。
ニアショア機構は、ニアショア開発を請け負いたい地方企業とマッチングできるサービスです。一般社団法人である日本ニアショア開発推進機構が運営しています。
エンジニア調達に関する無料サポートサービスなどもあり、ニアショア開発を依頼したいなら欠かせないサービスと言えるでしょう。
※関連サイト
一般社団法人日本ニアショア開発推進機構
2.ニアショアIT協会から探す
2つ目はニアショアIT協会から探す方法です。
ニアショアIT協会は、地域活性化を目標として、地方のIT企業のニアショア開発の受注をサポートしている協会です。ニアショアIT協会の会員になることで、同じく会員である企業にニアショア開発を依頼することができます。
会員企業の一部は公式サイトから確認することが可能です。ニアショアIT協会も上記と併せて活用すると良いでしょう。
※関連サイト
一般社団法人ニアショアIT協会
ニアショアとオフショアはどっちが良い?
最後に、ニアショア開発とオフショア開発はどちらが優れているかまとめました。以下の場面ごとに、ニアショア開発とオフショア開発、どちらを選択すべきか解説します。
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- 予算が少ないならオフショア
- 大規模なシステムを構築したいならオフショア
- 複雑なシステムを構築したいならニアショア
- リスク分散をしたいならオフショア
システム開発の外注を検討している方はぜひ参考にしてください。
1.予算が少ないならオフショア
開発予算をおさえることに重点を置くなら、オフショア開発がおすすめです。
ニアショア開発は、地方エンジニアに依頼する分人件費をおさえることができます。ただし、最近はニアショア開発を依頼する企業が増えていることもあり、人件費も上がってきているため思ったほどの効果を得られない可能性もあります。
対してオフショア開発は、地方よりも更に人件費が安い海外に依頼するため、コスト削減効果が非常に期待できます。物価が安い国なら人件費が日本の半分未満の場合もあります。
2.大規模なシステムを構築したいならオフショア
大規模なシステム開発を行う予定ならオフショア開発がおすすめです。大規模開発を行う場合多くのエンジニアを確保しないといけないからです。
地方にも優秀なエンジニアが多くいますが、海外や都心と比較するとそこまで多くないため、ニアショア開発では十分な人材を確保できない可能性があります。
くわえて、優秀な人材は複数プロジェクトに関わることが多いため、自社の開発にすべてのリソースを割けないかもしれません。
対してオフショア開発は人材の確保がしやすく、大規模開発に適していると言えます。
たとえばベトナムでは、国をあげてIT人材の教育に力をいれているため、優秀なエンジニアが多くいます。また、IT技術は基本的に世界共通なため、海外エンジニアのスキルは日本ともマッチする場合が多いです。
3.複雑なシステムを構築したいならニアショア
複雑なシステムを構築したいならニアショア開発がおすすめです。
オフショア開発の場合、どうしても言語や文化の壁がネックになります。現地のエンジニアとのコミュニケーションに苦労する場合もあります。
複雑なシステムを開発する場合、システムの詳細を海外エンジニアに正確に伝えることが難しく、認識やイメージに齟齬が生まれ、開発に時間がかかってしまう可能性もあります。
対してニアショア開発の場合、日本語でやり取りできるため、システムの細かい機能に関しても正確に伝えることができます。
4.リスク分散をしたいならオフショア
リスク分散に重点を置きたいならオフショア開発がおすすめです。
日本は災害が多い国であり、地震などの影響でサーバーが故障してしまいサービスが停止してしまうリスクがあると言えます。
一方海外は日本に比べると災害件数が少ないです。そのため、オフショア開発の方が災害に対する対策ができると言えるでしょう。
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
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- ニアショア開発を行うメリット:コストの削減/コミュニケーションが取りやすい/地方活性化につながる/リスクの分散
- ニアショア開発を行うデメリット:エンジニアの確保が難しい/企業選定の難しさ/技術力が高いとは限らない
- ニアショア開発を依頼する方法:ニアショア機構から探す/ニアショアIT協会から探す
オフショア開発もニアショア開発も開発コストが削減できるメリットが大きいです。少子化やエンジニア不足などの影響もあり、今後オフショア開発・二アショア開発はさらに注目されることが予想されます。
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