本記事では、システム開発を検討している企業へ向けて、見積もりの算出方法の種類や前もって指示しておきたい見積もりの項目について解説します。
また、開発業者から見積もりをもらう際に注意したいことや、チェックすべきポイントもご紹介します。
文末では開発業者へ見積もりを依頼する際に伝えておくべき項目をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.システム開発の見積もりの特徴
ビジネスにおいて何らかの業務を他社へ発注する場合、契約前に見積もりを提出してもらい依頼を検討するのが一般的です。
システム開発を他社へ依頼する場合も同様ですが、システム開発においてはさまざまな開発方法や工程があるため、見積もりの内容が複雑化になることもあります。
同じ内容のシステム開発を依頼しても、企業によって見積り額に大きな差があることも多いです。
余分なコストを発生させないためにも、システム開発の基本的な知識や金額相場について理解を深めておきましょう。
見積金額の内訳
システム開発会社で発生するコストの大部分は人件費です。
人件費とはいわば作業コストであり、具体的には以下のような作業が含まれます。
-
- 要件定義を元に設計書などのドキュメント作成
- プログラム開発と動作確認
- 実装作業
また、システム開発の原価は「人件費(単価)×想定する作業工数(日数)」で算出できます。
依頼する企業によってなぜ見積もりの金額に違いが出るのかというと、各企業で設定されている人件費単価と、作業工数が異なるためです。
見積もりをもらう場合は、それぞれの企業で単価と工数がどのように算出されているか・異なるかに着目することが重要です。
人件費(単価)が異なる理由
人件費が異なる理由は、大きく分けて2つあります。
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- 固定費に違いがあるから
- 技術者によってスキルレベルに違いがあるから
システム開発企業側は原価を回収し利益を出す必要性があるため、企業の固定費(オフィス賃料等)が高いと、その分が人件費に反映されるため高額になります。
また、スキルレベルや専門性等に応じてシステム開発企業側も作業者に報酬を支払う必要があるため、優秀な技術者は見積もりも高額になります。
2.見積もりの大まかな目安
システム開発における案件種類別の費用目安は、以下の通りです。
システム開発の種類 | 費用目安 |
業務システム | 400万円〜 |
Webシステム | 130万円〜 |
簡易顧客システム | 20万円〜 |
見積り金額の算出方法の種類と大まかな金額の相場を把握した上で、複数社からシステム開発の見積もりをもらい検討を進めるとよいでしょう。
3.システム開発の見積もり算出方法
システム開発における見積もりの算出方法は主に3種類あります。
見積もりを依頼する際、依頼先候補である複数の企業へ算出方法を指定して出してもらうのもおすすめです。
類推見積(トップダウン)
類推見積は、過去に対応実績のある類似プロジェクトを参考にして見積もりを出す方法です。
過去の事例を参考にするため、他の算出方法よりもスピーディーに見積もりを出すことができます。
また、類似のプロジェクトをもとに算出するので発生するコストや予想工数に大きなズレが生じにくく、正確性も高いことが特徴です。
しかし、依頼するシステム開発の内容をその企業が初めて対応する場合は、参考にできる事例がないためこの方法は使用できません。
あくまでも過去に類似の対応実績がある企業にのみ適用できる方法です。
係数モデル(パラメトリック見積)
特定の数式モデルを使用して、それぞれの作業を数値化し見積もりを算出する方法です。
例えば、製品Aを500個作る見積もりをもらいたい場合、過去のデータを参照して製品A1個を作るのにかかるコストを算出します。
算出の結果、1個あたり300円のコストだとすると製品Aを500個作るためのコストは15万円となります。
数学的な算出方法のため、複数社に見積もりを出しても担当者の知識や経験の違いによる金額の変動が少ないことがメリットです。
その反面、過去のデータやサンプル数に依存しすぎてしまうという面もあり、サンプル数が不十分だと見積もりの精度が下がってしまうため注意が必要です。
ボトムアップ(工数積上げ)
システム開発で完成するシステムとそれに必要な工程や構成を想定し見積を算出する方法です。
ひとつの作業工程ごとに料金を算出できるため、見積り項目の抜け漏れが発生しにくく、他の算出方法より精度が高いことが魅力です。
しかし、完成するまでの工数が予想しにくい大規模なプロジェクトにこの方法は向いていません。
4.システム開発における一般的な見積りの項目
システム開発にかかる費用は複雑なため、見積もりを依頼する際には算出方法だけではなく、費用項目も指定するとさらに比較しやすくなります。
システム開発における一般的な見積り項目としては、以下の項目が挙げられます。
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- 要件定義費用
- 設計費用
- UIデザイン費用
- 開発費用
- テスト・導入費用
- 受入支援・導入支援費用
- 購入費用
- 旅費・交通費用
- 保守費用
実際に見積もりを依頼する際には、それぞれの費用項目に関して詳しく把握しておきましょう。
以降ではそれぞれの概要を解説していきます。
要件定義費用
要件定義費用とは要件の内容を理解し、必要な機能と性能を具体的に分析・検討した上で、システムの方針や大まかな仕様を決定する際にかかる費用です。
要件定義書は、はじめに依頼側の企業がシステム開発で実現したいことや解決すべき課題・問題点などを記載した上で依頼先の企業へ提供します。
認識にズレがあると依頼した通りの開発が進められないため、開発業者は要件定義書の内容をしっかりと理解する必要があります。
設計費用
設計費用とは要件定義の後、具体的な作業を進めるための詳細な設計等に発生する費用です。
基本設計やプログラミング設計の他にも、サーバーなどのインフラ整備や使用するプログラミング言語、開発期間なども検討します。
UIデザイン費用
UI(User Interface)とは、ユーザーインターフェースの略語であり、ユーザーから見たシステム画面のを指します。
UIデザインが優れていることで、ユーザーからみたシステム画面の利便性が、向上する効果が期待できるでしょう。
UIデザインに関しては、既存のテンプレートを使用することなくカスタマイズしたオリジナルのUIデザイン等を使用する場合、別途デザイン費用が発生します。
開発費用
開発費用は、システム開発に必要な人件費や技術費全般のことを言います。
実際にシステム開発を行うSE(システムエンジニア)やプログラマーといった技術者と、全体工程を管理するプロジェクトマネージャーなどの管理に関わるメンバーの人件費が含まれます。
テスト・導入費用
完成したシステムがエラーや不具合なく稼働するかテスト実施する際に費用が発生します。
テストは完成時だけではなく、開発途中でも複数種類、複数回実施する場合があります。
さらに、完成後システムを導入する場合にも導入費用が発生します。
近年は導入費用を抑えるために、サーバーやシステム導入に必要な機器などを全てレンタルできるサービスも普及しておりそのレンタル料金などもここに含まれます。
受入支援・導入支援費用
完成したシステムを実務で使用するためには、既存システムに蓄積されたデータを新システムに移行する作業が必要となり、その費用を受け入れ支援費用といいます。
さらに、新しいシステム導入のためのマニュアル作成や操作手順を説明する研修会などを実施する場合、導入支援費用も発生します。
なお、導入支援費用は、依頼する企業によっては導入後の無料サポートサービスとして提供していることもあるため契約前に確認してみましょう。
購入費用
新システムを実装するために新たなサーバーを購入・レンタルしたり、テストや動作確認用の機器を購入する場合に発生する費用です。
例えば、スマートフォンなどで動作確認が必要な場合、実際に従業員が使用している社用機器を使うと業務に影響がでてしまうため、動作確認用のスマートフォンを購入しなければなりません。
旅費・交通費用
地方のシステム開発企業に依頼する場合は、打ち合わせなどにかかる交通費や宿泊費等も費用に計上されます。
打ち合わせの回数が多くなればなるほど、旅費・交通費用も高くなるため、ある程度は考慮しておく必要があるでしょう。
保守費用
システム開発が完了し実装した後に発生する不具合やバグの修正、機能の改修やメンテナンスに必要となる費用です。
操作方法の案内などでサポートサービスを必要とする場合、この料金も保守費用に含まれます。開発業者によっては、運用後の保守サービスをオプションとして用意していることがあります。
サポートサービスが必要な場合は、見積もり依頼時にオプションとして別途料金がかかるか確認してみましょう。
5.見積もりを受け取った後のチェックポイント
前段で紹介した見積もりの算出方法や見積もり項目を指定した上で、複数社から見積もりをもらった際のチェックポイントを解説します。
見積り内容全体を見渡してチェックする必要があり、単純な金額の安さだけで判断しないよう注意しましょう。
作業範囲が明記されているか
ある企業では見積の対象範囲が要件定義からテスト・実装まで、他の企業では基本設計からリリース後のサポートまで等、企業によって見積内に含まれる作業範囲が異なる場合があります。
より正確な見積を算出するため、開発業者には見積の対象となる作業範囲を明確にしてもらうか、こちらからあらかじめ指定しておくと良いでしょう。
また、開発中に発生するトラブルやリスクを想定した上でそれをリカバリーする費用が含まれているかも重要なチェックポイントとなります。
開発に必要な工数が明確になっているか
依頼側がイメージした通りのシステム開発を実現するためには、開発途中での進捗管理や品質管理が非常に重要です。
万が一認識のズレなどがあった場合も、定期的な確認を行っていれば開発の早い段階で途中で気づくこともできるため、大幅な軌道修正を防げます。
そのため、見積もり金額の中に進捗管理や品質管理といった管理工数が計上されているかも確認しましょう。
設計や開発に必要な工数に気を取られてしまい、要件定義の確認や設計のために必要な事前調査にかかる費用も見落としがちです。
事前調査や分析に必要な工数、費用も考慮して見積もりを出してもらうよう事前に伝えておきましょう。
金額に妥当性があり、責任の所在が明確になっているか
見積もり金額を提示された際、算出されたコストや工数に不自然な点がないか、類似のシステム開発にかかる費用と差が開きすぎていないか確認しましょう。
費用の項目ごとになぜその金額になるのか、妥当な金額なのかという視点でチェックを行います。
もしその金額になることに疑問を感じたり不明点がある場合は、開発業者に説明をしてもらうのが良いでしょう。
トラブル発生時の責任の所在も明確化しておきましょう。
責任の所在が曖昧なまま開発をスタートさせると、トラブルが起こった時にどちらが責任を取るかという点でさらに問題が大きくなる可能性があるためです。
そのため、トラブルを必要以上に大きくしないよう、それぞれの責任の範囲は事前に明確にしておきましょう。
6.システム開発の見積もりを依頼する際に気をつけるべきこと
複数の企業からシステム開発の見積もりをもらい比較を行う時に注意するべきことは、要求を明確化することです。
明確になっていない部分は開発業者が想像で見積もりをすることになり、各企業の見積り金額にバラつきが出てしまいます。
また、要求が明確になっていないまま開発に着手すると、言語化されていなかった要望などが次々に浮き彫りになり、開発期間もコストも想定よりかかってしまいます。
それを防ぐためにも、見積り依頼時前の段階で現場のヒアリングなどを実施し、要望を可能な限り言語化し整理しましょう。
そうすることで、各企業からも項目の内訳が明確な見積もりをもらいやすく、適切な企業を選びやすくなります。
最後に、見積依頼前に各企業へ伝えるべき内容を以下にまとめました。実際に見積もりを依頼する際には参考にしてみてください。
【見積もり依頼時に各企業へ伝えるべき内容】
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- 見積もりの算出方法(類推見積、ボトムアップなど)
- 見積もりの項目(設計費用、開発費用など)
- 大まかな要件定義(システム開発でどんな課題を解決したいのか、最終的な目的など)
- 現場から上がったシステム開発で実現したい要望など
- 作業範囲の明確化(見積もりの料金では工程のどこからどこまでが対応範囲なのか)
- 想定できるトラブル発生時のリスクヘッジ費用を含める
- トラブル発生時の責任の所在を明確に線引きする(見積もり確認後に要調整)
7.まとめ
本記事では、見積もりの算出方法の種類や前もって指示しておきたい見積もりの項目について解説してきました。
実際にシステム開発企業に見積もりを依頼する際には、以下の3つの要点をチェックする必要があります。
-
- 作業範囲が明記されているか
- 開発に必要な工数が明確になっているか
- 金額に妥当性があり、責任の所在が明確になっているか
また、適切な依頼や指示を行うためには、事前に社内でも理解を深め、依頼内容などを明確にしておくとよいでしょう。
システム開発依頼を予定されている方は、ぜひ本記事で解説しているチェックポイント等を適宜参考にして、事前準備~依頼を行ってみてください。
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