システムは開発するだけで完了ではなく、開発後は運用保守を行う必要があります。しかし運用保守とは何なのかご存知ない方も多いのではないでしょうか。本記事では運用保守の意味、運用保守の業務内容・必要なスキル、運用保守を依頼する際のポイントについて解説します。
システム開発を考えている担当者、保守運用に困っている担当者の方はぜひ参考にしてください。
運用保守とは?
まず、運用保守とは何か、定義について整理しましょう。運用保守は、システム運用とシステム保守に分かれます。この2つは混同されることも多いですが厳密には異なる業務内容です。
システム運用とシステム保守について、それぞれ詳しく解説していきます。
システム運用
システム運用とは、システムが毎日正常稼働するための作業のことです。
具体的にはサーバーなどの起動やデータ入力、ログや負荷状況の監視など、毎日決まったルーティーンワークをこなしていきます。
Webサービスやアプリは毎日ユーザーが同じように使えるよう整える必要があります。そのためにもエンジニアはシステムの状況を監視し、問題がないことを確認しなくてはいけません。
システム保守
システム保守とは、システムに問題が起きた際の修復作業のことです。
システム運用を行っていても、想定外の事態が発生し、サービスが正常に提供できなくなることはあります。その場合、エンジニアはただちに復旧に向かう必要があります。
具体的にはプログラムのバグの修正、データベースのチューニング、サーバーなどのハードウェア機器の交換などを行います。
また、今後どうすれば問題が起きなくなるかも考え、対策を打つ必要があります。たとえば、サーバーへの負荷が重すぎる場合、サーバーの増設やクラウド化を検討するなどです。その場しのぎだけでなく、根本的な解決策を考えなくてはならないのです。
システム運用と保守はこのように意味合いが異なりますが、システムの安定稼働が目的という点は共通しています。
システムの運用保守の代表的な業務
システム運用保守の代表的な業務は次の5つです。
-
- 運用設計
- システム監視
- メンテナンス
- 障害対応
- アップデート
システムを自社で運用する場合、これらの業務を行える人材を確保する必要があります。運用保守にかかるコストを計算できるよう、運用保守の業務内容をできる限り詳細まで把握しておきましょう。
1つ1つの業務内容について詳しく解説していきます。
1.運用設計
まず、システム運用保守を行うための運用設計を行う必要があります。運用設計とは、システム運用・保守をどのように行うかをまとめた書類のことです。
たとえば、毎日どのサーバーやプログラムを監視するか、障害が発生した場合にどのフローで解決するか、各運用・保守の担当者は誰なのか、などを予めまとめておきます。
運用設計をしないと、いざトラブルが起きた際に誰がどの手順で解決に向かえば良いかわからず、迅速に対応することができません。また、解決のための手順書がないと、ミスをしてしまい余計に事態を悪化させる結果を招く恐れも高くなります。
そのため運用設計は必ず必要なものといって良いでしょう。
2.システム監視
システム監視とはWebシステムやアプリなどが日々問題なく動くように監視することです。システムが記録しているログの確認や、サーバーやネットワーク機器の検査などを行います。
システム監視をどのように行うかは企業にとって課題となることが多いです。場合によっては、24時間365日、常にシステムを監視しないといけません。
24時間システムを監視する場合、当然1人ではできず最低でも6人程度はエンジニアが必要になります。そのため、人件費も多くかかってくるでしょう。
運用保守を自社で行う場合、システム監視をどうすべきかが重要となります。
3.メンテナンス
システムのメンテナンスも重大な業務と言えます。運用設計で作成した手順書に従い、システムのバックアップや各システム・ハードウェアの点検などを行う必要があります。
メンテナンスの内容によっては、サービスの利用を一部制限しないといけないこともあります。その場合、ユーザーに事前にメンテナンスの日程を告知しないといけません。
アプリや金融機関のメンテナンスの告知を、アプリの通知やメルマガなどで見たことがある方も多いでしょう。
導入している機器の数が多い場合、メンテナンスも複雑化します。メンテナンス作業が大変な場合、システムを導入して自動化することも視野に入れる必要があります。
4.障害対応
障害対応も運用保守の重大な業務です。障害が発生した場合、保守担当者はすぐさまトラブルの原因を調べます。原因を調べる際は、システムのログやシステム運用時の記録内容が役立ちます。
原因が判明した場合、不具合の範囲や発生日時なども調べ、最適な復旧方法を検討します。また、クライアントにも障害内容と復旧方法について共有を行います。
障害が解決したら、障害内容について報告書にまとめ、今後同じ障害を繰り返さないために実行することをクライアントに共有します。
5.アップデート
OSやミドルウェアのアップデートも運用保守の業務範囲です。クライアントに提案したうえで、運用設計で作成した手順書に従ってアップデートを行います。
古いOSなどは脆弱性があり、外部から攻撃を受ける可能性があるため、セキュリティリスクを低下させないために定期的にアップデートを行う必要があります。
なお、OSやミドルウェアのアップデートに関しては、システムがオンプレミスではなくクラウド上に構築している場合、インフラ運用はベンダーが行っているため、自社で行わなくて良い場合もあります。
システムの運用保守に必要なスキル
続いて、システムの運用保守に必要なスキルを解説します。最低限必要なスキルは次の4つです。
-
- システム開発スキル
- インフラスキル
- 対応力
- 正確さ
これらのスキルを持った人材でないと、運用保守の業務をこなすのは難しいでしょう。1つ1つの必要なスキルについて詳しく解説していきます。
1.システム開発スキル
運用保守の担当者は最低限度のシステム開発スキルは必要です。
運用保守ではシステムを1から作ることはありませんが、既存システムを改良しないといけない場面はあります。たとえば、障害の原因がインフラではなくシステム側にある場合、ソースコードを読み取り問題箇所を修正しなければいけません。
また、サーバーなどに対する負荷を抑えるために、プログラムのアルゴリズムの改善を行う場合もあります。そのため、ある程度のプログラミングスキルなどは必要でしょう。
2.インフラスキル
運用保守にはインフラスキルも重要となります。サーバーやネットワークに不具合の原因がある場合、インフラの知識がないと修復作業ができません。
また、最近ではオンプレミスではなく、クラウド上にシステムを構築する企業が増えています。そのため、AWSやGCPなどのクラウドサービスを扱える知識が必要な場合もあります。
3.対応力
運用保守担当者には対応力が要求されます。
トラブルが起きた場合には迅速に対応しなくてはいけません。被害を最小限に食い止めるために、まずは問題を収束させ、後で根本的な解決を行うなど臨機応変に対応する必要があります。
くわえて、日々のメンテナンスや監視などの業務もこなす必要があります。さまざまな業務を同時並行して行う力も求められるでしょう。
4.正確さ
運用保守担当者には正確さも要求されます。
メンテナンス作業では、サービスの根幹部分となる箇所にアクセスして作業することもあり、もしミスをしたら障害を起こしてしまう可能性もあります。
また、運用保守業務は夜勤が発生することも多いです。夜勤であってもシステム監視を不備なく行うには体力も必要になってくるでしょう。
自社で運用保守ができない場合の対処方法
ここまで運用保守の業務内容や必要なスキルを解説しました。自社に運用保守を担当できる人材がいる場合は良いのですが、そうでない場合人材を確保しなければいけません。
自社で運用保守を行うのが難しい場合、外部に委託する方法もあります。外部に委託する方法には次の2種類があります。
-
- 開発会社に運用保守も任せる
- 運用保守専門会社に個別に依頼する
これらの方法の詳しい内容について詳しく解説していきます。
1.開発会社に運用保守も任せる
1つ目は、システム開発を依頼した会社に運用保守まで一貫して任せる方法です。
開発会社には、開発チームと運用保守チームがいて、どちらにも対応できることがほとんどです。運用保守サービスの内容に関しては、企業の公式サイトに書かれていることが多いので、開発だけでなく運用保守の欄も確認したうえで依頼すると良いでしょう。
公式サイトでわからない場合は、直接開発会社に問い合わせし、聞いてみることがおすすめです。
2.運用保守専門会社に個別に依頼する
2つ目は、運用保守専門会社に個別に依頼する方法です。
MSP(マネージドサービスプロバイダ)と呼ばれる企業は、運用保守のみを専門に請け負っています。すでにシステムが完成している場合はMSPに依頼するのも手です。
運用保守に特化しているため、ノウハウが蓄積されており、細かい要求にも応じてくれることが多いです。たとえば、「システム監査だけ行って欲しい」など、必要なサービスのみ依頼することもできる会社もあります。
システムの運用保守を依頼するポイント
続いて、システムの運用保守を外部に委託する際のポイントを解説します。次の3つのポイントを意識することで、委託する企業の選定がしやすくなります。
-
- 対象範囲を明確化させる
- 費用が適切か判断する
- 契約期間を確認する
1つ1つのポイントについて詳しく解説していきます。
1.対象範囲を明確化させる
1つ目は対象範囲を明確化させることです。
どこまでが運用保守の範囲なのか、開発会社と認識を合わせることが大切です。認識が異なっていると、後々揉める原因になってしまうこともあります。
たとえば、「ミドルウェア・OSも運用保守の範囲なのか」「バージョンアップ後も対応してくれるか」など質問し、サービス対象を明確化させることが重要でしょう。
2.費用が適切か判断する
2つ目は費用が適切か判断することです。
運用保守の料金は月額制であることが多いです。ただし障害対応などが発生した場合、追加料金が発生する可能性もあります。
開発会社の料金形態について確認し、自社のシステムに合ったものを選定しましょう。
一般的には、開発コストの約15%が年間の運用保守費用として妥当と言われています。もちろん、システムの規模や種類にもよりますが、15%よりもかなり高くなるようなら、別の開発会社に依頼する場合を視野に入れることをおすすめします。
3.契約期間を確認する
3つ目は契約期間を確認することです。
運用保守を行ってくれる期間は何ヶ月なのか、期間が切れた場合、再度契約が必要か、契約は自動更新となるのか、など契約内容を詳細まで確認することが重要です。
あまり契約期間が長すぎると、ベンダーの変更がしにくくなるので注意が必要です。
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
-
- システムの運用保守の代表的な業務:運用設計/システム監視/メンテナンス/障害対応/アップデート
- システムの運用保守に必要なスキル:/システム開発スキル/インフラスキル/対応力/正確さ
- 自社で運用保守ができない場合の対処方法:開発会社に運用保守も任せる/運用保守専門会社に個別に依頼する
- システムの運用・保守を依頼するポイント:対象範囲を明確化させる/費用が適切か判断する/契約期間を確認する
業務システムや基幹システムを導入する際は、開発面だけでなく運用保守の面も考慮して開発会社を選定する必要があります。開発会社がどのような運用保守の実績を持っているかも確認してみましょう。
どの開発会社を選ぶべきか悩んでいる場合、ぜひ株式会社エイチビーラボにお任せください。
株式会社エイチビーラボでは、ベトナムに特化したオフショア開発サービスを提供しております。システムの新規構築および既存システムの運用保守には豊富な実績があります。既存システムの運用保守でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ご相談から、開発、運用まで親身にサポートいたします。