テスト作業が多く作業効率が悪いため、テスト自動化ツールを導入したいと考える方も多いのではないでしょうか。システム開発やアプリケーション開発において、テストは必ず行う工程です。このテストを「自動化できないか?」と一度は考えたことがある担当者もいるでしょう。
テスト自動化ツールを導入する前に、ツールの種類や特性について知っておくことが望ましいです。本記事ではテスト自動化ツール導入のメリットや注意点、ポイントについて解説します。
テスト自動化ツールとは?
テスト自動化ツールは、システム開発におけるテスト作業を自動化するツールのことです。
システム開発では数多くのテストが行われますが、テスト自動化ツールでは、それらのすべてや一部を自動化することができます。
たとえば、プログラムに入力データを与え、実行結果を1つずつ確認できるツールなどがあります。また、テストコードを作成するツールやテスト結果を管理するツールもテスト自動化ツールに含まれます。
テスト自動化ツールを使うことで、システム開発で必要不可欠なテスト作業を短縮することができ、ひいては企業の生産性アップにつなげることが可能です。
ソフトウェア開発におけるテストの重要性
ソフトウェア開発を行う場合、システムの大小に関わらずテストが必ず行われます。
テストが不十分だとバグが残ったままとなり、ソフトウェアを使うユーザーに迷惑がかかります。また、機密情報を扱うシステムなどにバグがあると、情報漏えいしてしまい何億もの損害が発生する可能性もあります。
そのため、ソフトウェア開発では何種類ものテストを行い品質を高めていきます。たとえば、1つの機能のみを抜き出して個別テストを行ったり、ユーザーの操作を想定してテストしたり、スマホやタブレットなど別の環境を使ってテストしたりします。
テスト作業は重要かつ非常に時間のかかる大変な工程です。テスト作業をいかに効率よく行うかで、システム開発にかかる期間・費用が大きく変わってきます。
テスト自動化ツールが注目されている理由
テスト自動化ツールは最近注目されており、導入事例がIT企業の間でも増えています。テスト自動化ツールが注目される理由の1つに、開発されるシステムの複雑化が挙げられます。
最近は業務システムや基幹システムが企業に浸透し、システムがあることが「当たり前」の状態となったため、ユーザーはより便利で高度なシステムを求めるようになってきています。機能が複雑なシステムは開発工数がかかるだけでなく、テスト工数も増えます。
また、最近のWebサービスやオンラインゲームなどは、ユーザーの要望に従って何度もアップデートを行うようになりました。サービス提供側はアップデートの度にテストを繰り返さないといけません。
そのため、テスト自動化ツールを導入し、テスト期間をなるべく減らすことが必要になります。
テスト自動化ツールの例
テスト自動化ツールの例をまとめました。これら8つが代表的なテスト自動化ツールです。
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- UIテストツール
- APIテストツール
- 静的解析ツール
- テスト管理ツール
- CIツール
- モデルベースドツール
- 単体テストツール
- 単体テストフレームワーク
テスト自動化にはさまざまな種類があり、どのテストを自動化するかによって使うべきツールは変わってきます。たとえば、システムテストではUIテストツールを使う場合が多いです。
どの場面で使うのが良いかにも着目しつつ、1つ1つのテストツールの特徴を解説していきます。
1.UIテストツール
UI(ユーザーインターフェース)に関するテストを自動化するツールです。具体的には、想定されるユーザーの操作を実際に行い、正しく動くか確認することができます。
システムの操作内容を記録することで、テストデータの作成を自動化することが可能です。
UIテストツールは、総合テストと呼ばれる本番環境と同様の環境でテストを実施する際に使われることが多いです。
2.APIテストツール
API(アプリケーションプログラミングインタフェース)に関するテストを自動化するツールです。アプリやモジュール間のやり取りが正しく行われているか確認するために使います。
たとえば、プログラムがプロトコルに従ってパラメーターを適切に渡しているか、などをチェックすることが可能です。
3.静的解析ツール
ソースコードを解析して問題のある箇所を探すためのツールです。静的解析とは、プログラムを実行せずに行う検証のことを言います。静的解析を行うことで、コーディング規約に違反している箇所などを検出することが可能です。
静的解析ツールは、テスト工程ではなく開発時に補助として使われています。
4.テスト管理ツール
システム開発で行われる一連のテストを管理するためのツールです。
テスト状況などはエクセルで管理する企業も多いですが、テストケースが多い場合はエクセルだと管理が煩雑になるケースが多いです。
テスト管理ツールを使えば各テストの進捗や検証結果などがわかりやすくなり、テスト管理の効率がアップします。
5.CIツール
テスト自動化ツールの補助として使われるツールです。
CIとは、Continuous Integration(継続的インテグレーション)の略称で、継続的にソースコードの結合を助けるツールです。また、CIツールにソースコードを登録すると、テストの実行や結果レポートの作成などを自動的に行ってくれます。
厳密にいうとテスト自動化ツールではないですが、他のツールと共に多く使われています。
6.モデルベースドツール
設計書からテストケースの自動作成を行うツールです。
ツール内のルールに従って設計書を書くことで、テストケースを作り出してくれます。テストケースの作成を自動化することで、抜け漏れを防ぐことが可能になります。
モデルベースドツールは、システム開発の要件定義や設計のフェーズで使われます。
7.単体テストツール
システム開発における単体テストを自動化できるツールです。単体テストは1番最初に行うテストであり、プログラムやモジュール単体でテストを行います。
単体テストツールでは、ソースコードを読み込みテストケースの自動作成から実行結果の出力まで行うことが可能です。
8.単体テストフレームワーク
単体テストの枠組みとして用いられるツールであり、単体テストで使うテストコードの自動作成などを行うことができます。
単体テストフレームワークは、モジュールに対して入力値を設定し出力結果の検証を行ってくれます。テストコードを作成する必要がなくなるメリットがあります。
テスト自動化ツール導入のメリット
テスト自動化ツールを導入することには次の4つのメリットがあります。
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- ヒューマンエラーの減少
- テストにかかる工数の削減
- 不具合の早期発見
- 営業時間外にも稼働可能
テスト自動化ツールの導入によって、業務効率化や生産性向上が実現する可能性もあります。1つ1つの導入メリットについて詳しく解説していきます。
1.ヒューマンエラーの減少
テスト自動化ツールを導入することでヒューマンエラーの減少が見込めます。
人間が行った場合、テストケースに従ってテストしても、ミスをしてしまうことはあります。また、テストした結果システムに影響を出してしまい、障害を発生させてしまうこともあります。
機械は人間と違ってミスをすることがありません。あらかじめ決められたルールに基づいて実行していくだけだからです。
ヒューマンエラーが減少し、リカバリーにかかる工数や労力を削減できる点はテスト自動化ツールを導入するメリットでしょう。
2.テストにかかる工数の削減
テスト自動化ツール導入により、テスト工数が削減されるメリットもあります。
システム開発工程では多くの場合、実際の開発よりもテストに多くの時間を使います。ツールを導入してテスト工数を削減すれば、システム開発全体の工数が減り、ユーザーに早くシステムを提供することが可能です。
また、テストにかける人件費も削減できるでしょう。IT企業にはテストを専門に行うテストエンジニアという職種もありますが、ツールを導入すればテストエンジニアを開発担当側に回せる可能性もあり生産性が上がるのです。
3.不具合の早期発見
テスト自動化ツール導入は不具合の早期発見にもつながります。
たとえば、先ほど挙げた静的解析ツールを使えば、テスト期間前にソースコードの不具合を検出することができます。不具合を早期発見できれば開発のやり直しが減り、開発期間の短縮も実現します。
4.営業時間外にも稼働可能
テスト自動化ツールは営業時間外にも稼働させることが可能です。
テストを人の手で行う場合、業務時間内にしかテストができません。テスト担当者が他の仕事に追われてる場合、テスト期間を延長せざるを得なくなり、システムのリリース日を調整する必要が出てくることもあります。
一方、テスト自動化ツールは24時間稼働させることができます。そのため、リリース日などのスケジュールに影響を及ぼしにくいです。
テスト自動化ツールの注意点
続いて、テスト自動化ツールを導入する際の注意点を解説します。次の2つの注意点は最低でも留意しておく必要があるでしょう。
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- 導入コストがかかる
- 指定箇所しかテストできない
1つ1つの注意点について詳しく解説していきます。
1.導入コストがかかる
テスト自動化ツールに限った話ではないですが、ツール導入には必ず導入コストがかかります。
ツールを導入する際は、ランニングコストだけでなく、導入時のコストも踏まえたうえで検討する必要があります。たとえば、ツールを使う頻度が少ないなら、コストをかけるだけのメリットがない可能性もあります。
ツール導入前に、どのシステムのテストを自動化するか、自動化によってどの程度テスト時間削減が見込めるかなどを吟味しておく必要があるでしょう。
2.指定箇所しかテストできない
テスト自動化ツールは人間と違って、あらかじめ指示された通りにしかテストすることができません。
たとえば、メッセージの表示内容がおかしいなどは、人間であればテスト項目に書かれていない場合でもひと目で見つけ出すことができます。
しかし、機械はプログラム通りにしか動くことができないため、このような明らかな問題をスルーしてしまうこともあります。
テスト自動化ツールを導入するポイント
最後に、テスト自動化ツールを導入する際のポイントを解説します。次の3つのポイントを意識すると、より自社に合った効果的なツールを導入できるようになります。
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- 導入後の保守運用を考える
- 自動化すべきテストか検討する
- テスト自動化8原則をチェック
1つ1つの導入ポイントについて詳しく解説していきます。
1.導入後の保守運用を考える
テスト自動化ツール導入の際は、導入時だけでなく、その後の保守運用についても考えておく必要があります。
何らかのシステムを開発する際は、開発のことだけでなくその後の運用・保守についても考えておく必要があります。
たとえば、導入後の定期メンテナンスやアップデートなどを、誰がどのようなフローで行うか事前に考えておかないといけません。
また、テスト自動化ツールの場合、テスト対象のシステムが改良されれば、それに合わせてプログラムを変更する必要が出てきます。プログラムの変更にかかるコストなども算出しておくことが望ましいでしょう。
2.自動化すべきテストか検討する
自動化ツール導入前に、自動化すべきテストなのか検討することも大切です。
先述したように、ツールはプログラム通りにしか動かないため、人間の目には明らかな不具合も見逃す可能性があります。
そのため、テスト箇所によっては、ツールではなく人間の目で確認した方が良いこともあります。
3.テスト自動化8原則をチェック
テスト自動化ツールを導入する前に、「テスト自動化8原則」を確認しておくことをおすすめします。
テスト自動化8原則には、どのようなテストにおいても共通するテスト自動化ツール導入の注意点がまとめられています。
こちらを確認しておくことで、ツール導入後の失敗を防げる可能性があります。
※参考記事
テスト自動化の8原則(テスト自動化研究会)
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
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- テスト自動化ツールの例:UIテストツール/APIテストツール/静的解析ツール/テスト管理ツール/CIツール/モデルベースドツール/単体テストツール/単体テストフレームワーク
- テスト自動化ツール導入のメリット:ヒューマンエラーの減少/テストにかかる工数の削減/不具合の早期発見/営業時間外にも稼働可能
- テスト自動化ツールの注意点:導入コストがかかる/指定箇所しかテストできない
- テスト自動化ツールを導入するポイント:導入後の保守運用を考える/自動化すべきテストか検討する/テスト自動化8原則をチェック
システム開発工程の中でもテストは品質を左右する重要なものですが、納期が逼迫しているなどでテストに十分な時間をかけられない企業も多いです。テストに時間をかけられない場合、テスト自動化ツールの導入がおすすめできます。
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