オフショア開発にはどのような課題があるのかご存知ない方も多いのではないでしょうか。本記事ではオフショア開発の課題およびその対処方法について解説します。
オフショア開発とは?
オフショア開発とは、海外企業にシステムやアプリの開発を委託することです。ベトナムやタイ、中国などの企業には日本からの委託を受け付けている企業が多くあり、それらの企業と契約を交わします。
ソフトウェア開発やWebアプリ、スマホアプリ開発など、あらゆる分野でオフショア開発が行われており、近年注目されている開発手法の1つです。
オフショア開発に関してさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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オフショア開発はなぜ人気があるのか?
海外企業に開発を委託するというのは大変そうですが、それでもオフショア開発は高い人気を誇っています。
オフショア開発の人気がある1番の理由は、日本にIT人材が不足しているためです。たとえばWebアプリ開発を行う場合、インフラエンジニアやサーバーサイドエンジニア、フロントエンドエンジニアなどを採用する必要があります。日本はIT人材が不足しているため、すべてのエンジニアを揃えるのは特に中小企業の場合難しいでしょう。
また、日本は諸外国に比べプログラミング教育が遅れていると言われています。最近になりようやく小学校でのプログラミング授業がスタートしました。ただ、それでも日本は少子化が進んでおり、システム開発の需要に人材数が今後も追いつかないことが予想されます。
そのため、海外エンジニアの力を借りてシステム開発を行う企業が増えているのです。特にベトナムやタイなどは物価が安い分、人件費が安いためオフショア先として人気があります。
オフショア開発とニアショア開発の違い
オフショア開発と似た単語にニアショア開発というものがありますが、別の開発手法です。オフショア開発では海外企業に委託しますが、ニアショア開発では日本の地方企業に委託します。
オフショア開発とニアショア開発はそれぞれ一長一短であり、どちらが良いなどはありません。ニアショア開発に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、併せてお読みいただけるとより知識が深まるでしょう。
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オフショア開発を依頼する国は?
昔はオフショア開発と言えばほとんど中国でしたが、最近ではインドやベトナムなどの国が増えてきました。
インドやベトナムは人件費が安く、開発コストを半分程度に抑えることができるためです。加えて、発展途上国ながらIT人材育成にも力を入れており優秀なエンジニアが多くいます。
また、日本と時差が少なく連絡が取りやすいのも選ばれる理由でしょう。一方、物理的な距離は遠いため、直接会ってやり取りする場合移動コストは多くかかってしまいます。
オフショア開発の課題と対処方法について
オフショア開発は現在流行ってはいるものの、失敗してしまう企業も多くあります。オフショア開発を成功させるには、次の5つの課題をクリアしなくてはいけません。
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- 言語の壁
- 文化の違い
- 管理の難しさ
- 制作物のクオリティ
- 時差があることによる問題
1つ1つの課題のその対処方法について詳しく解説します。
1.言語の壁
オフショア開発の最もわかりやすい課題が言語の壁です。海外エンジニアは基本的に日本語を話せないため、開発を依頼する場合母国語で会話する必要があります。また、仕様書などもすべて母国語で書かないといけません。
たとえば、ベトナム企業に依頼するならベトナム語が話せる人材が必要です。ただ、英語を話せるエンジニアはいても、ベトナム語を話せる人はそう多くはありません。
母国語のスキルが不十分だと上手くコミュニケーションが取れず、システム要件の認識が食い違ってしまうこともあり、開発がやり直しになる可能性もあります。
対処方法:スキルの高いブリッジSEを採用
言語の壁を乗り越えるには、経験豊富なブリッジSEを採用する必要があります。優秀なブリッジSEなら、マネジメントスキルがあるうえに、母国語も堪能で上手くやり取りすることが可能です。
単に母国語の文法や単語の意味を理解しているだけでなく、現地の文化も踏まえたうえで、生きた言葉を話せる可能性があります。
優秀なブリッジSEを確保するには、ある程度多くの給料を与える必要があるでしょう。具体的にどの程度の給料が妥当なのか、またどのようなスキルを保有したブリッジSEを雇うべきなのか、などに関しては以下の記事に詳しくまとめてあります。
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2.文化の違い
海外と日本では文化がまったく異なることも多いです。たとえば日本企業は時間厳守で働くことが多いですが、海外によっては時間通りに動く習慣がない場合もあります。
ほかにも、会議の場で思ったことをはっきり伝え合う傾向が強いなど、日本との違いに驚くことも多いです。
オフショア開発では文化の違いに苦しめられることもあります。海外の文化を頭ごなしに否定してしまうと、信頼関係を築くことができなくなり、コミュニケーションがおろそかになったり開発の質が低下してしまったりすることもあるでしょう。
対処方法:コミュニケーションを積極的に取る
文化の違いを理解するためにも、オフショア開発では、コミュニケーションを積極的に取ることが大切です。たとえばZoomで飲み会を開催したり、雑談を行う時間を設けたりして、異文化を理解できる機会を増やします。
海外エンジニアとは長く付き合うことも多いので、基本的には自社メンバーと同じように接するのがポイントです。
お互いの文化を知り受け入れることができれば、対処法を考えることができます。たとえば、時間通り動かない人が多いとわかれば、スケジュールに余裕を持たせる、こまめに進捗を報告してもらうようにする、などの解決策が思い浮かぶでしょう。
3.管理の難しさ
オフショア開発では委託先と物理的な距離が離れているため、開発現場の状況を確認する頻度を増やすことはできません。そのため管理の難しさを感じる場合も多いです。
たとえば、会議では「予定通り進んでいます」と報告されていたが、実際は納期に間に合いそうにない状況だった、といったことが起こる可能性があります。
また、言語の壁もあって、進捗をなかなか報告してくれない場合もあるでしょう。
対処方法:開発進捗をこまめに報告してもらう
対処方法は開発進捗をこまめに報告してもらうことです。
こまめに報告してもらうには一工夫が要ります。たとえば、報告書のフォーマットを作成して報告のハードルを下げたり、毎週決まった時間に報告してもらうようにルール決めしたりすることが大切です。
4.制作物のクオリティ
制作物のクオリティに関しても頭を悩ませる場合があります。
ベトナムやインドなどの国はIT教育が進んでおり、基本的には優秀な人材が多いです。とはいえ、優秀な人材がどれくらい在籍しているかは企業によっても変わります。
外注先の選択を間違えると、要望通りに開発してもらえなかったり、「これは自社では難しいです」と言われてしまったりする可能性もあるでしょう。
対処方法:外注先の選定ポイントを意識する
オフショア開発を依頼する前に、委託先の技術力を確認する必要があります。具体的には各企業の実績を調べ、自社とマッチするスキルを保有しているか調べないといけません。
もちろん外注先を選別した結果、人件費が高くなってしまうことはあります。費用とスキルレベルのバランスは見極める必要があるでしょう。
5.時差があることによる問題
オフショア開発では時差の問題もあります。だいたいベトナムは2時間、インドは3時間日本と時差があるため注意が必要です。
時差があるとこちらが営業時間でも向こうが営業時間外である時間帯もあり、連絡したいタイミングで連絡できなくこともあります。
対処方法:時間が重なるタイミングを上手く活用
対処方法は時間が重なるタイミングを上手く活用することです。たとえばベトナムに委託するとして、業務時間が次のようになっているとします。
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- 日本:9:00〜12:00、13:00〜18:00
- ベトナム:9:00〜12:00、13:00〜18:00
日本とベトナムの時差は2時間なので、11〜12時、15〜18時は連絡が取りやすいです。この時間にオンライン会議を行えるように、スケジュールを調整する必要があるでしょう。
また、時差を上手く利用することで逆にメリットになることもあります。たとえば、日本で18時に作業を終わらせた後も2時間ベトナムで作業ができるため、上手く作業を引継げば稼働時間を伸ばすことが可能です。システムの監視が必要な場合などに活用できるでしょう。
それでもオフショア開発を行うメリットはある
オフショア開発には多くの課題があり、それらをすべて解決するのは容易ではありません。しかし、それでもオフショア開発を行う企業が多いのは次の4つのメリットがあるからです。
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- コストの削減
- 人材を確保しやすい
- 技術力が高い人材も多い
- 開発チームを固定できる
これら4つは、開発を依頼する側にとってもメリットと呼べるものですので、開発企業を選定する際の参考にしてください。1つ1つのメリットについて詳しく解説します。
1.コストの削減
オフショア開発の1番のメリットはコストの削減です。
インドやベトナムなど人件費の安い国に委託すれば、それだけ開発コストを下げることができます。人件費は開発期間が長くなれば比例して高くなるため、特に大規模開発ではオフショア開発は効果を発揮するでしょう。
ただし、移動費やコミュニケーションコスト、ブリッジSEの採用費用など、オフショア開発を行うことで新たにかかる費用もあります。それらの費用も踏まえたうえで、オフショア開発を行うことが得かどうか判断しないといけません。
2.人材を確保しやすい
海外には優秀なエンジニアが多くいるうえに、オフショア開発を行う企業は現状そこまで多くないため、人材を確保しやすいメリットがあります。
日本はエンジニアが不足しており、特に中小企業は人材を確保できない場合も多いです。これからの時代、人材確保が難しい場合オフショア開発も視野に入れる必要があるでしょう。
3.技術力が高い人材も多い
インドやベトナムなどは、IT教育が進んでおり技術力が高い人材も多くいます。
プログラミングやクラウドサービスのスキルは全世界共通です。そのため、彼らが使った技術力は日本向けサービスの開発にもそのまま役立てることができます。
4.開発チームを固定できる
ラボ開発をしやすくなるのもオフショア開発のメリットです。
ラボ開発では業務委託でありながら、自社専用の開発チームを編成します。自社専用チームとは、コミュニケーションも取りやすいです。また、自社に合ったスキルが蓄積されていくため、長く関わるほど開発の質が高くなる可能性があります。
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
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- オフショア開発の課題と対処方法について:/言語の壁/文化の違い/管理の難しさ/制作物のクオリティ/時差があることによる問題
- それでもオフショア開発を行うメリットはある:コストの削減/人材を確保しやすい/技術力が高い人材も多い/開発チームを固定できる
システム開発を依頼する場合、オフショア開発の課題をクリアできるだけの実力がある企業を選定することがポイントです。
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