IT化が当たり前になった昨今において、企業の担当者にとって理解しなければいけないインフラ構築。
業務の効率化を考える方のなかには、「インフラ構築という言葉は知っているけど、具体的な内容までは…」という方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな方々に向けて、インフラ構築という言葉の概要や具体的な手順、開発手段を解説していきます。システムを導入する前段に位置するインフラ構築を理解することで、業務効率化などのビジネス課題の解決をよりスムーズに進められるでしょう。
インフラ構築とは
インフラ構築とは、システム稼働に必要な基盤を築く作業を指します。一般的に道路や電車といった設備を指すインフラという言葉ですが、IT業界ではシステムを稼働させるために必要なハードウェアとソフトウェアを指します。
昨今のシステム開発は、すでにパッケージ化されたクラウドサービスを用いるケースが増加していますが、独自のシステムを作成する場合には、このインフラ構築が必要です。
ただし、インフラそのものの種類は多くなく、「パソコン、サーバー、ストレージ、ネットワーク、テープ」などのハードウェア、「OS、ミドルウェア」のソフトウェアがあることさえ理解できていれば問題ありません。
利用するシチュエーションによっては、設計や配線といった実作業を指し示すために、インフラ構築という言葉が用いられることもあります。物理的に存在するモノだけでなく、実際に使える状態にするまでの工程を意味する場合もあるのです。
また、インフラを構築する手段は、大きく2つ「自社開発」か「アウトソーシング」に分けることができます。クラウドサービスを利用するケース以外では、パソコンやサーバーの手配を伴うため、多くの企業がアウトソーシングする方法を採用しています。ただし、後述するように、手法ごとに異なるメリットとデメリットがあるため、自社の特性に合わせた方法を選択する必要があります。
インフラ構築に必要な手順とは
ここからは、インフラ構築の具体的な手順を確認していきましょう。クラウドサービスを利用するケースでは不要になる手順もありますが、基本的には要件定義、設計と構築、テスト、運用の4つのフローを経て、インフラが構築されます。
手順を理解することで、実際にインフラ構築を実行するときに、何も知らない状態と比較したときよりスムーズに進められるでしょう。検討段階でも、抽象的でよいのでインフラ構築の手順を把握することをおすすめします。
必要なインフラの要件定義
要件定義とは、システム開発やアプリケーションの開発時にまず着手する工程で、必要な機能やクライアントの要望をわかりやすくまとめていきます。インフラ構築における要件定義は、必要なサーバーの要件を明文化したり、OSやミドルウェアの要件を明文化したりと、求めるインフラの要件を洗い出していく工程です。
自社でインフラ構築を行う場合は、当然自社で要件定義を行います。インフラの構築や管理に長けたエンジニアがいれば、要件定義はスムーズでしょう。構築を想定しているインフラに必要な機能を洗い出すときに専門知識がないとできないからです。
インフラ構築をアウトソーシングする場合は、委託先の会社が要件定義から担当します。ヒアリングを通して、その会社が求めるインフラを明確にしていきます。
全体設計と機能設計
次に要件定義に沿って、インフラの全体を設計します。必要とするインフラの条件を満たすサーバーを選定したり、台数を決めたり、ストレージの容量を決めたり、アーキテクチャを決定したりします。それを明文化することで、インフラ構築プロジェクトの地図の役割を果たします。後の「構築」はこの全体設計に沿って適切に進んでいるか確認したり、軌道修正したりするのです。
また、全体設計が完了すれば、それぞれ詳細な機能設計に移ります。これらすべてを結合するとプロジェクトの地図になります。
設計に沿って構築
全体設計、機能設計で明文化した理想のインフラの全体像を実現するためのフェーズが構築です。それぞれの設計に沿って、環境を構築していきます。アーキテクチャの設定をしたり、サーバーを準備したりします。
また、構築の時点でセキュリティ対策にも注意する必要があります。このフェーズでは、情報漏えいや不正アクセスなどトラブルが発生してしまう可能性があるため、セキュリティ対策を怠ってしまうことはリスクなのです。
テストの実施
計画通りのインフラの設計になっているか、構想通りにシステムが機能するかを確認する手順がテストの実施です。取り入れるインフラ構築の手法にもよりますが、テスト段階では次の3種類の試験が行われます。
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- 単体テスト:個別の機器が問題なく作動することを検証する作業
- 結合テスト:いくつかの機器を組み合わせ、設計通りの動作を確認する作業
- システムテスト:本番に近い環境で行う、システムの動作や負荷試験
インフラ構築では、設計通りに構築されていないケースが多く存在します。また、単体システムでのバグや、システム同士をつなぎ合わせたときのバグなど、必ずバグが発生します。
思い込みや誤った接続といったヒューマンエラーをなくすために、テストの実施という手順が設けられています。
運用
テストまでの工程が完了したら、実際の運用を開始します。
テスト段階で設計通りに動作することを確認しているものの、実稼働後にトラブルが発生する可能性もゼロではありません。そのため、インフラが安定稼働するまでの期間は、サーバやネットワークへの負荷を監視し続ける必要があります。
インフラ構築において特に気をつけるポイントとは
手順を理解したところで、インフラ構築を行う際に気をつけたいポイントを解説していきます。特に社内でインフラ構築を行う場合は、ポイントを抑えリスクを回避した作業を行いましょう。
インフラ構築のフェーズが完了に近づくにつれて修正にかかる工数が増加していきます。事前にリスクを把握し、最小限の工数で品質の高いインフラを構築するために、下で紹介するポイントは理解しましょう。
安全性
情報管理という観点から、安全性はまず気をつけるべきポイントでしょう。
知識や一定のスキルがあれば、実施可能なインフラ構築ですが、情報が資産である点には注意が必要です。
誤った手順で構築作業を進めてしまった場合、社外秘の情報が漏洩してしまうリスクがあるのです。具体的には、「社内で用意されたUSBのみを使用する」「個人情報は決められた手順で削除する」といった形で明文化することで、問題が発生した場合のリスクヘッジを行うことができます。
セキュリティ対策と使い勝手
セキュリティ対策と使い勝手は、構築したインフラが業務効率化かどうかを決める重要なポイントです。
セキュリティ面においては、ファイアウォールの最新化やアクセスを検知する仕組みを作るといった手段で対応することができます。ただし、セキュリティを厳しくするほどインフラへの負荷が大きくなるため、使い勝手との両立を果たすことは容易ではありません。
会社の規模が大きくなるほど、シンプルな設計にする、全社共通のツールを採用するといった方法で、使い勝手とのバランスをとる必要があります。
耐障害性
インフラを構築する際には、耐障害性に配慮した設計にすることも重要です。耐障害性とは、システムがどれだけの障害に耐えられるかを意味する言葉です。
多くの企業がハードウェアや回線などを冗長化する、バックアップデータを常に取れる設計にするといった方法で、障害に強いシステム構築を行います。
仮に1つのディスクが故障した場合でも、自動でスペアディスクに変更できる機器を組み込むことで、トラブルへの備えが十分なインフラが構築されるのです。
インフラ構築を自社で行うメリットとデメリット
インフラ構築には自社で行うケースと、アウトソーシングするケースが存在しますが、この2つの手段にはどのようなメリット、デメリットが存在するのでしょうか。まずは、自社でインフラ構築を行う場合の利点とリスクを解説します。
メリット1:他社に情報を開示せずに済む
自社でインフラ構築を行えば、必要以上に情報を社外に開示せずに作業を進めることができます。
アウトソーシングする場合でも、事前に開示する情報を把握し、必要以上の情報を開示しない状態を用意することができます。ただし、実業務の前に手間が発生し、余計な工数が発生し、外注するメリットが目減りしてしまうことも少なくありません。その点、社内でインフラ構築を行う場合は、情報の取り扱いを意識する必要がなく、工数のみを意識したスムーズな作業が可能になります。
メリット2:工数やコストを把握しやすい
インフラ構築は、社内で行うことで工数やコストを正確に把握できます。
アウトソーシングすることで不透明になりがちな材料費や工賃も、社内で行えばすべてを把握した状態で作業を進めることができます。予算を想定しやすく、また調整もしやすいでしょう。
社内タスクとして管理することで、納期や人員といった工数を細かく調整できる点も、社内でインフラ構築を行うメリットです。
デメリット:適切な人材を確保する必要がある
社内でインフラ構築を行うには、適切な人材を確保しなければなりません。
アウトソーシングするケースであれば、事前に情報を集め、実績のある企業に依頼することで専門家のノウハウを活用できます。
しかし、社内でのインフラ構築は、適切なスキルをもつ人材探しから始まります。市場に適切なスキルや知見を持った人材がいる保障もないし、また採用する場合は人件費が発生します。「採用する」といっても、求人媒体に掲載したり、エージェント会社と採用要件をすり合わせたり、面接したりと、相当な労力が必要なのです。
ITやシステムは今後も進歩していくと考えられ、決して無駄になるわけではありませんが、適切な人材の採用活動から始める手間はデメリットでしょう。
インフラ構築をアウトソーシングするメリットとデメリット
自社で行う場合だけでなく、インフラ構築をアウトソーシングするケースにもメリットとデメリットが存在します。
メリット1:専門家に頼れる
インフラ構築をアウトソーシングすることで、専門家のノウハウを活用できるというメリットがあります。
社内でインフラ構築を行う場合は、担当者の知識だけが頼りとなります。しかし、インフラ構築を実績のある業者に依頼すれば、専門家の幅広い知識を活用でき、また様々なことを相談しながら進めることで、より適切な設計や開発ができるでしょう。
メリット2:インフラ構築以外の業務も依頼できる
インフラ構築をアウトソーシングすることで、ほかの業務を依頼できることもメリットの1つです。
一般的な企業はインフラ構築に伴い、ハードウェアの手配や設計といった業務を行いますが、適切なシステムの選択と設定といった業務を依頼することも可能です。インフラの設計を担当しているので、より親和性の高い提案を期待できます。
デメリット:機密情報を開示する必要がある
自社でインフラ構築を行う場合とは対照的に、業務をアウトソーシングする場合には、機密情報を開示しなければならないというデメリットも存在します。
事前に情報漏洩に対する対策を講じなければならないのはもちろんですが、絶対に情報事故が起こらないと言い切れない点が、インフラ構築をアウトソーシングする最大のデメリットといえます。
インフラ構築をアウトソーシングする場合の会社を選ぶポイント
インフラ構築をアウトソーシングする場合には、ポイントを抑えた企業選びをする必要があります。事業である以上、コストを重視する企業も少なくありませんが、業務効率化によって利益につながる投資先として、実績やサポート体制といったポイントを確認していきましょう。
過去の実績を確認する
インフラ構築をアウトソーシングする場合には、過去の実績を確認することから始めましょう。
インターネットでの情報収集が当たり前となった今では、サービス内容と金額だけで依頼する企業を決めることも可能です。ただし、インフラ構築は実績があることを確認した状態で依頼することをおすすめします。
公式ホームページにユーザーの感想が掲載されている企業をはじめ、気になる企業がある場合には、過去の実績に関する問い合わせを行いましょう。また、お問い合わせや資料を確認するだけでなく、いくつか候補を絞った時点で、積極的に商談を持ちかけてみましょう。
実際に話してみることで、実績やその他情報を得ることができます。
構築後のサポート内容や体制を確認する
構築後のサポート内容や体制も、アウトソーシングする際に忘れてはならないチェックポイントの1つです。
社内にインフラ構築のノウハウがあり、リソース不足で外注するというケースであれば、トラブルがあっても自社で対応することができます。
しかし、現段階で、「インフラ構築に関する知識がない」という場合には、サポートが手厚い企業へアウトソーシングすることをおすすめします。トラブルが発生したときにサポートがしっかりしていなかったり、解決しないリスクを考えたりすると、これは特に重視したいポイントです。
費用とサービス内容を確認する
企業の実績、構築後のサポート体制を確認したところで、費用とサービス内容をチェックしていきましょう。
もちろん、企業には「コストが第一」といった優先順位がありますが、費用とサービス内容から費用対効果が見合うか確認するのです。
先述した通り、とにかく安い企業を探し出すことも可能です。ただし、実績のある企業ほど費用がかかります。しかし、ユーザーが気づきにくい点への価値を提供しています。そのため、費用とサービス内容を確認し、費用対効果の見合う企業であることをチェックしておく必要があるのです。
まとめ
IT化が進む昨今において、多くの企業が理解しておくべき作業がインフラ構築です。クラウド型のシステムを導入する企業がたくさんあるなかでも、インフラ構築の知識はシステム担当者にとっては必須でしょう。
パソコンやサーバーといったハードウェア、OSやミドルウェアなどのソフトウェアを指すインフラ構築の概要や作業手順について理解することで、トラブルへの対応やメンテナンスなど、対応できる可能性もあります。自身で対応は不可能でも、外部企業へ依頼するときにインフラへの理解があれば、コミュニケーションがスムーズでしょう。インフラ構築を検討している方は、まず周辺知識の理解から始めることをおすすめします。
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