オンプレミスとクラウドの違いがわからないという方も多いのではないでしょうか?昨今はクラウド移行を行う流れが強まっていますが、あえてオンプレミスを選択する企業も増えています。本記事ではオンプレミスの概要、メリット・デメリットなどについて解説していきます。
オンプレミスの将来性についても解説しているため、クラウド移行を検討している方もぜひ参考にしてください。
オンプレミスとは?
オンプレミスとは、サーバー機器などのハードウェアを社内やデータセンターに設置してシステムを運用する形態のことです。
昔はシステム運用と言えばオンプレミス一択でした。そのため、オンプレミスという言葉自体も存在していなかったのです。
2000年代に入りAWSなどのクラウドサービスが注目され出しました。クラウドと区別するために、サーバーなどのITインフラを自社で運用する従来の形態をオンプレミスと呼ぶようになりました。
最近ではクラウドの人気が高まっていますが、オンプレミスにもいくつかメリットがあり、あえてクラウド移行しなかったり、クラウドからオンプレミスに戻したりする企業もあります。
オンプレミスとクラウドの違い
自社でインフラを用意するのがオンプレミス、用意しないのがクラウドです。
クラウドとは、クラウドサービスを使ったシステム運用を行う形態のことです。クラウドサービスとはインターネット経由で提供されるサービスのことであり、AWS、CGP、Azureなどが代表例です。
クラウドサービスの提供者は多くのサーバーを保有しています。そのサーバーを仮想化という技術を使って企業ごとに分割しています。この仮想化によって、企業はまるで自社専用の環境かのようにサーバーを利用することが可能です。
クラウドサービスを使えば、自社でインフラを用意しなくてもシステム運用ができます。クラウドサービスの種類やクラウド構築方法について詳しく知りたい方は、以下の記事が参考になるでしょう。
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オンプレミスのメリット
クラウドと比較した場合のオンプレミスのメリットを解説します。メリットは次の4つです。
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- カスタマイズ性が高い
- セキュリティ対策を自分たちで行える
- 既存システムとの連携が容易
- 他企業のサービスに依存しない
これら4つのメリットがあるため、場合によってはクラウド移行しない方が良いこともあります。1つ1つのメリットについて詳しく解説していきます。
①カスタマイズ性が高い
オンプレミスではクラウドと比較したときにカスタマイズの柔軟性が高いです。これはオンプレミスの最も代表的なメリットでしょう。
オンプレミスならサーバー構築に使用するOSもソフトウェアも自由に選択できます。また、不具合が発生した場合にも自社の都合の良いように改善できるので素早く対応可能です。
一方、クラウドの場合、すでに構築された環境の一部を使うため、自社で自由にカスタマイズすることはできません。与えられたサービスの範囲内でしか自由に運用できないのです。
②セキュリティ対策を自分たちで行える
オンプレミスで運用する場合、セキュリティ対策を自社で自由度高く行うことができます。
クラウドの場合セキュリティ対策はサービス提供者に任せることになりますが、すべてを任せるのは不安という場合も多くあるでしょう。
特に基幹システムなど、機密情報を扱うシステムをクラウド上で運営することはリスクもあります。クラウドはインターネットに繋がっているため、外部から侵入されやすいのも気になるところです。セキュリティ面に関してはオンプレミスの方が優れています。
③既存システムとの連携が容易
オンプレミスは既存システムとの連携が容易なこともメリットです。
システムをすべて自社で管理すれば、システム同士の連携が簡単に行えます。システムの一部をクラウドに移行すると、他のオンプレミスのシステムと連携が難しくなってしまいます。クラウド移行するなら連携のことも考えた上で戦略を練る必要があります。
④他企業のサービスに依存しない
他企業のサービスに依存しなくて良いこともオンプレミスのメリットです。
自社ですべて管理することで、インフラ管理のノウハウが社内に蓄積されやすくなります。障害やトラブルにも自分たちで解決に動けるようになります。
また、オンプレミスの場合メンテナンスも自由なタイミングで行えます。クラウドの場合、メンテナンス期間中はサービスの利用制限がかかってしまう可能性があります。
くわえて、クラウドの場合サービスが終了する可能性もあります。AWSなどの大手のサービスが突然終了することはないとはいえ、他企業のサービスに依存することはさまざまなリスクがあると言えます。
オンプレミスのデメリット
続いて、クラウドと比較した場合のオンプレミスのデメリットを解説します。
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- 初期費用が高額
- ランニングコストが発生する
- 導入までの期間が長い
- 専門的スキル・知識を持った人材が必要
これら4つはオンプレミスを活用する間はどうしてもネックになります。1つ1つのデメリットについて詳しく解説していきます。
①初期費用が高額
オンプレミスでは、初期費用が高額になってしまうことは、クラウドと比較したときのデメリットです。
最初に準備するサーバーやソフトウェアの購入にお金がかかるため、初期費用を用意できない企業の場合、導入が難しいかもしれません。
対してクラウドは既存のサーバーを活用するため、初期費用はほとんどかからないのです。そのため創業したばかりでお金を使えない企業や、とりあえず試しに運用したい企業におすすめできます。
②ランニングコストが発生する
オンプレミスの場合ランニングコストが発生します。
サーバーの電気代やデータセンターの利用料などが毎月かかってしまいます。
クラウドも月額料金を取られるため、ランニングコストはゼロではありません。ただ、月額料金は利用料に応じて増える仕組みであるため、必要以上にコストが発生することが少ないです。
また、オンプレミスの場合サーバーを運用する担当者の人件費もかかります。サーバのメンテナンスやソフトウェアアップデート、障害時の復旧対応などが行える人材を雇わなくてはいけません。採用せず外部に委託することもできますが、どちらにしてもランニングコストはクラウドと比較したときに多くかかってしまいます。
初期費用およびランニングコストの高さは大きなデメリットと言えるでしょう。
③導入までの期間が長い
オンプレミスは導入までの期間が長いのもデメリットです。
まず自社に合ったサーバーやソフトウェアを選定しなくてはいけませんし、その後の環境構築にも数ヶ月程度かかってしまうことが多いです。
クラウドなら契約を済ませて設定を行えば、すぐに運用を開始することができます。スピード感をもって導入したい場合はクラウドの方が向いているでしょう。
④専門的スキル・知識を持った人材が必要
オンプレミスの場合、自社でシステムを管理する必要があるため、高い専門性を持った人材の採用・育成をしなくてはいけません。インフラ管理ができる専門性を持ったエンジニアは、採用が難しいだけでなく、高い給料を支払う必要もあるため、ランニングコストが増加することにもつながります。
インフラ管理全般の知識やスキルを持ったエンジニアは市場に多くないので、採用が難しい点も考慮する必要があります。
クラウドならシステム管理は基本的にサービス提供者が行ってくれるため、社内にシステム管理ができる人材がいなくても運用は可能です。
オンプレミス・クラウドはどちらが良いのか?
ここまで解説したことを踏まえて、オンプレミスとクラウドのそれぞれのおすすめパターンをまとめました。
オンプレミスが適している企業は次の3つです。
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- 社内にシステムの管理ができる人材がいる
- 情報を厳重に管理する必要がある企業
- システム開発・管理にかけられる金銭的余裕がある企業
クラウドが適している企業は次の3つです
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- コストをおさえてシステムを運用したい企業
- 社内にシステム管理ができる人材が不足している企業
- システムの導入をいち早く行いたい企業
オンプレミスの今後について
オンプレミスの今後の動向について解説します。
「オンプレミスは時代遅れ」という声を多く聞きます。たしかにクラウドの方が、テレワークで活用しやすいうえにコストも抑えることができるため、時代に則していると言えます。
しかしオンプレミスの方が向いているシステムも多くあるため、オンプレミスが絶滅することはないと推測されます。
また、海外ではオンプレミスに回帰する傾向も見られます。たとえばDropboxは、AWSで管理していたデータをオンプレミスに移行したようです。サービスが成長して扱うデータ量が増えたため、自社で管理した方が良いと判断しました。
参考:海外で進む「オンプレミス回帰」 その背景に何があるのか(1/3 ページ) – ITmedia NEWS
オンプレミスとクラウドの併用も可能
オンプレミスとクラウドを併用する方法もあります。たとえば、漏洩が許されない大事なデータはオンプレミスのシステムで扱い、その他はクラウドで動かす、などです。
上手く使い分ければ両方のメリットを享受できる可能性があります。
実際にオンプレミスとクラウドを併用している企業も多くあります。
たとえば、神奈川トヨタ自動車は、SalesforceとAWSをハイブリッド利用して顧客データを管理しています。優先度の高いデータはオンプレミスであるSalesforceで、それ以外はクラウドであるAWSで管理する構成にしているようです。
参考:神奈川トヨタが20日間で構築した事例に学ぶハイブリッドクラウド導入4つのポイント – ホワイトペーパー [クラウドコンピューティング]
オンプレミスからクラウドに移行する手順
最後に、オンプレミスからクラウドに移行する手順を解説します。クラウド移行は次の4つの手順に従って行うのが基本になります。
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- 移行目的・計画を明確化させる
- オンプレミスのシステムの構成を洗い出す
- 移行後のサービス構成を固める
- 移行作業を行う
1つ1つの手順について詳しく解説していきます。
①移行目的・計画を明確化させる
1つ目は移行目的・計画を明確化させることです。
「なぜ移行すべきなのか」「どのデータをいつ対応するか」「クラウド化によって実現したい目標は何か」などを明確に決めることが重要です。
移行目的によって移行の方法が変わってきます。たとえば、「システムの老朽化が激しいからこの機会に移行したい」という場合、「システム自体を完全に作り直してから移行する」ことも検討する必要が出てくる可能性があるでしょう。
移行目的を洗い出したら、どのような手順で移行すべきか計画書を作成します。
②オンプレミスのシステムの構成を洗い出す
2つ目はオンプレミスのシステムの構成を洗い出すことです。
既存システムの構成や機能の整理を行い、どのクラウドサービスが適しているか検討を行います。たとえば、マイクロソフトの製品を中心に構成しているなら、同じくマイクロソフトのサービスであるAzureと相性が良い可能性があります。
利用サービスを決めたら、クラウド化によってパフォーマンスがどれほど改善されるか推測します。また、移行によるメリットだけでなく、デメリットや課題も洗い出します。
③移行後のサービス構成を固める
3つ目は移行後のサービス構成を固めることです。
たとえばAWSには120以上のサービスがありますが、どのサービスをどのように活用すべきか検討する必要があります。
サービス構成の変更は後からでも可能ですが、コストが余計にかかってしまいます。
サービス構成を固めたら、ランニングコストやサービスの月額料金などがいくらになるかシミュレーションしましょう。AWSなどには料金計算ツールが用意されています。
④移行作業を行う
4つ目は移行作業を行うことです。
クラウドサービス内へシステムを移行し、期待どおり稼働するかテスト運用を行います。
テストして問題がなければ続けてデータの移行を行います。データの移行方法はサービスによって異なりますが、AWSの場合AWS Database Migration Serviceを使えば楽に可能です。
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
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- オンプレミスとは、自社でサーバを管理しシステムを運用すること
- オンプレミスのメリット:カスタマイズ性が高い/セキュリティ対策を自分たちで行える/既存システムとの連携が容易/他企業のサービスに依存しない
- オンプレミスのデメリット:初期費用が高額/ランニングコストが発生する/導入までの期間が長い/専門的スキル・知識を持った人材が必要
- オンプレミスからクラウドに移行する手順:移行目的・計画を明確化させる/オンプレミスのシステムの構成を洗い出す/移行後のサービス構成を固める/移行作業を行う
最近ではアクセス面・コスト面の優秀さから、業務システムをクラウド移行する企業が増えています。しかしクラウド移行を行うには、クラウドサービスの特性を熟知したうえで、既存システムの課題を解決するにはどのようなシステム構成にすべきか吟味しなくてはいけません。
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