クラウド移行は一般的になりましたが、移行が上手くいかず途中で断念する企業も多くあります。クラウド移行を成功させるには、課題と解決方法をあらかじめ知っておくことが大切です。
本記事ではクラウド移行の課題と解決方法について詳しく解説していきます。クラウド移行について検討している担当者の方はぜひ最後までお読みください。
そもそもクラウド移行とは?
クラウド移行とは、自社のインフラ環境やシステムなどをクラウド環境に移行することです。また、クラウドサービスとは、インターネットを通じて提供されるサービスの総称を指します。
クラウドサービスには、Gmailなど単にネットを使ったサービスを提供するものもありますが、なかには開発に必要な環境を一括で提供するものもあります。代表的なサービスにAWSやGCP、Azureといったものがあります。
AWSなどのサービスでは、何台ものサーバーを運営し、それを仮想化という技術を使ってサービス利用者ごとに分割して提供しています。仮想化を使うことで、サービス利用者はまるで自分専用の環境であるかのようにサーバーを活用することが可能です。
最近では、オンプレミスからクラウドにシステムを移行する企業が増えており、これをクラウド移行と呼びます。クラウド移行することで、業務効率化・コスト削減などのメリットがあります。
ただし、単にシステムを移行させるだけでは、クラウドでシステムが最適に稼働するとは限らず、場合によってはシステムの改修が必要なこともあります。
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クラウド移行における課題
クラウド移行における課題とその解決方法について解説します。一般的なクラウド移行には次の6つの課題があります。
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- クラウド運用できる人材の不足
- セキュリティのリスク
- 業務フローの変更に従業員が対応できない
- 既存システムと連携できない
- 意外とコストがかかることも
- カスタマイズが自由にできない
クラウド移行する際はこれらの課題をいかに解決し、自社にとって最適なクラウド環境を構築するかが肝心となります。1つ1つの課題について詳しく解説していきます。
1.クラウド運用できる人材の不足
クラウド移行する際は、クラウド運用の知識やスキルを持った人材を確保しないといけません。クラウドへの移行ができても、クラウドの利点を活かせなければ意味がないからです。
しかし、クラウド化は最近流行し始めたことのため、クラウドの知識を揃えているエンジニアは多くはありません。
クラウドの知識が不足していると、むしろコストがかかってしまったり、非効率な運用フローを構築してしまったりする可能性があるので注意しましょう。
解決方法:クラウド運用を外注する
クラウド運用ができる人材を雇うのが難しい場合もあります。
社内にクラウドエンジニアが不足している場合、移行や運用・保守を外注するのも選択肢の1つです。クラウド知識がなくトラブルを発生させてしまうくらいなら、外注コストを支払ってでも、システムを安定稼働できる環境を整えた方がメリットがあると言えます。
開発企業では、クラウド運用や移行の代行サービスを行っている場合があるので、まずは相談してみることをおすすめします。
2.セキュリティのリスク
クラウド移行には、セキュリティ面のリスクがつきものです。
先ほども解説したとおり、クラウドサービスは1つのサーバーを企業ごとに分割して環境を提供しています。つまり、自社と同じサーバーを他の企業も使っているということです。
たとえば、他企業のサービスがウイルス感染などの被害に合った場合、自社にも影響が及ぶ可能性がゼロではないため、何らかの対策を取らなければいけない場合もあります。
特にクラウドに移行したシステムが機密情報を扱うものだった場合、情報漏えいの心配をしなくてはいけないのは厳しいところでしょう。
解決方法:ハイブリッドクラウドにする
解決方法としては、ハイブリッドクラウドにするというものがあります。つまりすべてのシステムをクラウド化するのではなく、一部クラウド、一部オンプレミスの体制を作ります。
たとえば、機密情報を扱うシステムはオンプレミス環境で厳重に管理し、それ以外はクラウド移行して運用・保守のコストを下げるようにする、というように使い分けます。
このようにハイブリッドクラウドにすることで、セキュリティ面の不安を極力なくすことが可能です。
3.業務フローの変更に従業員が対応できない
クラウドに移行すると業務システムや基幹システムの使い方が変わるため、業務フローの一部を変更しないといけない可能性もあります。
しかし、従業員によっては業務フローの変更を嫌がる方もいるでしょう。従来の業務フローで特に問題を感じていない方は、なぜクラウド移行するのか疑問に思うかもしれません。
また、社員が新しい業務フローに慣れるのに時間がかかってしまい、結果的に生産性が落ちてしまう可能性もあります。
解決方法:社員への周知を行う
解決方法は、社員への周知をクラウド移行前にしっかり行うことです。社員にクラウド移行の目的やメリット、移行後の業務フローを伝えます。
クラウド移行のメリットは、上層部だけ知っておけば良いと思われがちですが、移行目的がわからないと従業員は納得して作業できず、業務効率が下がってしまう可能性もあります。
また、移行後のマニュアルも整備し、移行後の混乱を防ぐようにします。
4.既存システムと連携できない
オンプレミスから一部のシステムのみクラウドに移行すると、他の社内システムと連携できなくなることもあります。
自社で使っているシステムとクラウド上のサービスが連携できるかは、クラウドサービスの種類によっても変わってきてしまいます。
解決方法:既存システムがクラウドにマッチしているか検討
既存システムがそのクラウドサービスにマッチしているか、事前に検討する必要があります。マッチしているサービスなら問題なく連携できる可能性が高いです。
たとえばMicrosoftが提供するAzureは、同じくMicrosoftソフトの製品と連携がしやすくなっています。
他にも最近は柔軟に連携できるサービスが増えているので、クラウド事業者に相談してみるのが良いでしょう。
5.意外とコストがかかることも
クラウド移行することで、運用・保守コストをおさえることができるメリットがあります。
自社でサーバー管理などをしなくて良いのは確かに大きいです。
しかし、システムの種類や利用方法によっては、想定外にコストがかかることもあります。また、各サービスの料金プランを比較しないままクラウド移行を進めると、自社と相性の悪いプランを選択してしまい、損をすることもあるので注意が必要です。
くわえて、クラウド移行自体にもコストがかかることも多いです。クラウド移行にあたってプログラムのアーキテクチャから変更が必要となれば、エンジニアの工数が発生し、相応にコストがかかります。
解決方法:コストシミュレーションを行う
クラウド移行前にコストシミュレーションを行うことが重要です。たとえばAWSなどのサービスにはコストシミュレーションができるツールがあります。
また、各サービスの料金プランも把握し、自社にとって最適なものを選定しましょう。
くわえて、クラウド移行にかかる費用も事前に見積もっておくことが大切です。もしシステムがレガシーすぎるなどで、改修に費用がかかりすぎてしまう場合、移行しないという選択や新しいシステムを導入するという選択を取ることも検討しましょう。
6.カスタマイズが自由にできない
クラウドサービスでは、カスタマイズが自由にできないこともデメリットです。
これは、クラウド提供事業者が構築しているインフラを活用することになるためです。ハードウェアの種類やベンダーを自社の都合の良いように変更することはできません。
カスタマイズが自由にできないという理由で、クラウド化しない企業もあります。しかし、クラウド化しない場合、社外からのアクセスが容易になるなどクラウド化のメリットを享受することができなくなってしまうジレンマがあります。
解決方法:プライベートクラウドを活用する
企業の特徴に合わせたクラウド環境を構築したいなら、プライベートクラウドを活用するのも選択肢の1つです。
プライベートクラウドとは、自社専用のクラウド環境を構築することです。パブリッククラウドのように他企業とサーバーを共有しないため、セキュリティ面が強化されるうえに、カスタマイズも自社の都合の良いように行うことができます。
プライベートクラウドはオンプレミスと一緒のように感じますが、社外からもアクセスできるなどクラウドのメリットは享受できます。
もちろん、自社専用の環境を構築する分コストはかかりますが、プライベートクラウドという選択肢があることも知っておいて損はないでしょう。
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それでもクラウドへ移行するメリットはある
ここまでクラウド移行に関する課題を解決する方法を解説してきました。クラウド移行を問題なく行うのは容易ではないため、断念する企業も多くあります。
しかしながら、クラウド移行のメリットも理解せずに断念するのは非常にもったいないです。クラウド移行には次の3つのメリットがあります。
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- 運用コストの削減
- 社外からのアクセスに対応
- サービス停止リスクを減らす
クラウド移行のメリットも知ったうえで、移行すべきかどうか判断を下すのが良いでしょう。1つ1つのメリットについて詳しく解説していきます。
1.運用コストの削減
クラウド移行することで基本的には運用コストを削減できます。
オンプレミスの場合、サーバーを自社で管理するため、電気代やサーバーを管理するための人件費も多くかかってきます。クラウドの場合、インフラの管理をサービス提供者に任せることが可能です。
2.社外からのアクセスに対応
クラウドへ移行することで、ネット環境さえあれば社外からでもシステムに容易にアクセスできるようになります。
最近ではテレワークを導入する企業が増えています。クラウド環境はテレワークと相性がよく、テレワーク導入にあたってクラウド化を検討する企業も多いです。
3.サービス停止リスクを減らす
クラウドへ移行することで、サービス停止リスクを減らせるメリットもあります。
自社でサーバーを管理する場合、震災などでサーバーが故障してしまえば、サービスが停止して復旧するまで売上が発生しなくなってしまいます。また、停止してしまえば、顧客やユーザーの満足度は低下するでしょう。
AWSなどのクラウドサービスでは、サーバーを堅牢なデータセンター内に設置しています。そのため災害が発生しても故障する可能性が低く、サービス停止リスクを減らせます。
あえてクラウド移行しない選択肢もある
ここまでクラウド移行の課題と解決方法、メリットについて解説してきました。クラウド移行には良い面・悪い面とあり、あえてクラウド移行しない方が正しい場合もあります。
クラウド移行すべきかどうか判断するのは難しいです。そこで、クラウド移行・オンプレミス、それぞれのおすすめパターンをまとめました。
こんな企業はクラウド移行がおすすめ
以下に該当する場合はクラウド移行がおすすめです。
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- テレワークを導入するため、社外からでもシステムへのアクセスを容易にしたい
- システム運用・保守のコストをおさえることを優先したい
- 容量の拡張・縮小を柔軟に行えるようにしたい
こんな企業はオンプレミスがおすすめ
以下に該当する場合はオンプレミスがおすすめです。
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- システムがレガシーすぎてクラウド移行に費用がかかりすぎる
- 自社システムとの連携がどうしても難しい
- そもそもシステムの活用度がそこまで高くなく移行のメリットが薄い
最後に
この記事で説明してきた内容をまとめると以下のとおりです。
◯クラウド移行における課題と解決方法
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- クラウド運用できる人材の不足⇒クラウド運用を外注する
- セキュリティのリスク⇒ハイブリッドクラウドにする
- 業務フローの変更に従業員が対応できない⇒社員への周知を行う
- 既存システムと連携できない⇒既存システムがクラウドにマッチしているか検討
- 意外とコストがかかることも⇒コストシミュレーションを行う
- カスタマイズが自由にできない⇒プライベートクラウドを活用する
クラウド移行には多くの課題があり、それらを解決するのは容易ではありません。クラウド移行を外注する場合、クラウド移行・構築に関する豊富な実績があり、課題に対する解決方法を明確に提示してくれる開発企業を選定する必要があると言えます。
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